取締役の能力を一目瞭然にする「スキル・マトリックス」とは? 取締役会に迫る“改革の圧力”連載・2021年、役員改革が始まった(1/5 ページ)

» 2021年10月05日 07時00分 公開
[柴田彰, 諏訪亮一ITmedia]

 2015年、上場企業に対してコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)が適用されました。従来の経営体制に変化を促すCGコードの導入を契機に、日本企業のガバナンス体制には顕著な変化が見られます。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 例えば、独立社外取締役を3分の1以上選任する東証一部上場企業の割合は、14年の6.4%から20年には58.7%へ大幅に増加しました。また、指名委員会等設置会社を除いて、任意の指名委員会・報酬委員会を設置する東証一部上場企業の割合は既に過半数に達しています。

 CGコードは、いわゆるソフトローといわれており、「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を説明するか)の手法を採用しています。東証一部において、全ての原則を実施している会社は26.0%、原則の90%以上を実施している会社は62.6%となっており、CGコードの原則を実施することを通じた形式的な体制整備は進展しています。

 一方で、「稼ぐ力の向上」や「攻めのガバナンス」という改革の理念のもと、経営の質を高めるという観点から本質的に高度なガバナンスに移行したといえる会社はそれほど多くありません。日本の大半の企業が形式的な対応にとどまっているとの指摘が多いのが現状です。

 そのような中、経済産業省のCGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)でさまざまな実務指針が提示されるなど、「形式から実質」を目指した動きが加速しています。

東証の市場再編とCGコードの改訂によって、加速する圧力

 東証は22年4月に、現在の市場第一部・市場第二部・マザーズおよびJASDAQの4つの市場を、プライム市場・スタンダード市場・グロース市場の3つの新しい市場区分へと再編します。現在の上場会社が新しい市場区分にそれぞれ移行するにあたっては、株主数、時価総額、流通株式比率、収益基盤・財政状態、ガバナンスなどの上場基準を満たす必要があり、この上場基準の中にCGコードの適用も組み込まれています。

 具体的には、プライム市場およびスタンダード市場の上場会社はCGコードの「全原則」(基本原則、原則、補充原則)について、グロース市場の上場会社はCGコードの「基本原則」について、各原則を実施するか、実施しない場合にはその理由をCG報告書で説明することが求められます。

 そうした中、21年6月にCGコードが再改訂されました。その主な狙いは次の3点にあります。

       1|2|3|4|5 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.