吉利は劣勢を覆すため、今年に入ってIT企業との提携を加速している。
1月から2月にかけて鴻海精密工業と完成車の受託生産を行う合弁会社を設立し、バイドゥ(百度)が設立したEVメーカーにも出資した。さらにはスマートカーのコックピット(運転席)や自動運転技術の開発でテンセント(騰訊)と提携、米国の新興電気自動車(EV)メーカーのファラデー・フューチャー(FF)とも提携・出資した。
そして9月下旬、スマートフォン参入の発表前日には、浙江省台州市のグループ会社で人工衛星の生産を始めたと発表した。独自開発した衛星を低軌道などに投入する「衛星インターネット」によって、高精度のナビゲーションを構築するなど、自動運転技術に活用するという。
こうして見ると、吉利はEV開発に乗り出したIT企業と連携することで設備を有効活用しながら将来的に自動車と密接に関係する周辺技術の洞察を進めていることが分かる。スマートフォン開発もその一環であり、アップルに対抗しようとは考えていないだろう。
吉利の子会社ボルボは10月4日、スウェーデンでのIPOを正式に発表した。ボルボは16年以降、何度かIPOを計画したが、その時々の事情で棚上げになってきた。吉利は引き続き筆頭株主として残るが、大きな区切りを迎えたといえる。
李氏は18年10月、「製造業はリスクが比較的低い業界で、手っ取り早く稼げないが、簡単に死にもしない」と語っていた。習近平国家主席とも親交が深い同氏は、恒大ショックで不動産市場が大揺れするのを横目に、長期的な視点で仕込みを続けているように見える。
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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