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» 2021年10月26日 07時00分 公開

ハラスメント加害者を処分するも、被害者の虚言だった 懲戒解雇を下した企業はどうなる?弁護士・佐藤みのり「レッドカードなハラスメント」(2/2 ページ)

[佐藤みのり,ITmedia]
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処分の際に注意すべきこと

 会社は、時に困難な事実認定を強いられることがあります。こうした場合にも、会社が適切な調査を行い、合理的な判断を下せば、結果的に虚偽の被害申告を見抜けずに、加害者に対して処分を下してしまったとしても、会社の不法行為とは評価されない可能性が高いでしょう。一方、安易に被害申告をうのみにして懲戒処分をすれば、会社が不法行為責任を負うこともあり得ます。

 会社は以下のポイントに十分注意し、ハラスメントの有無について判断しましょう。

  • 当事者の主張内容に一貫性があるか
  • 当事者の主張内容が客観的証拠と整合しているか
  • 虚偽の被害申告をする動機はあるか
  • 被害申告のタイミングは自然か
  • 供述する際、当事者の目つきや口調に不自然な点はないか

 ハラスメントの有無や内容を認定した後、加害者への処分を検討する際は、ハラスメント行為の内容、頻度、期間、経緯、動機、被害者の人数、加害者と被害者の立場や関係性、ハラスメントが業務に及ぼした影響などを考慮するだけでなく、加害者の反省の程度や、今までの処分歴、会社への貢献度……なども踏まえて、総合的に判断することが求められます。

 例えば、今ご紹介した事例で、A子の被害申告が真実であれば、B男の行為は「強制わいせつ罪」などの重大な犯罪行為になります。このような場合には、会社側が直ちに懲戒解雇処分について検討することもあるでしょう。

 一方、上司が部下を平手でたたいたといった事情があった場合、「暴行罪」という犯罪が成立する可能性がありますが、暴行罪は相手がけがを負うにいたらない場合に成立する、比較的軽い犯罪です。このような場合には、犯罪行為であることのみを理由に、直ちに懲戒解雇処分について検討するのは行き過ぎでしょう。

 部下の方が上司を挑発する言動を繰り返していたとか、上司が手をあげたのは1度きりであったとか、たたいた後、上司がすぐに謝罪していたといった、上司側に有利な事情があれば、そうしたことも考慮した上で、懲戒処分の種類を決める必要があります。

著者プロフィール

佐藤みのり 弁護士

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慶應義塾大学法学部政治学科卒業(首席)、同大学院法務研究科修了後、2012年司法試験に合格。複数法律事務所で実務経験を積んだ後、2015年佐藤みのり法律事務所を開設。ハラスメント問題、コンプライアンス問題、子どもの人権問題などに積極的に取り組み、弁護士として活動する傍ら、大学や大学院で教鞭をとり(慶應義塾大学大学院法務研究科助教、デジタルハリウッド大学非常勤講師)、ニュース番組の取材協力や法律コラム・本の執筆など、幅広く活動。ハラスメントや内部通報制度など、企業向け講演会、研修会の講師も務める。


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