定年後も「支えられる者」でなく「支える者」になる時代へ――再雇用、今さら聞けない「保険料や年金の扱い」はどうなるのか?(1/3 ページ)

» 2021年11月01日 08時00分 公開
[三戸礼子ITmedia]

 ここ最近、「定年」は一つのホットワードだ。私自身、55歳のカーブを曲がったところで、「定年」と書かれたゴールの旗がはっきりと見えた。50歳のときとは違う景色だ。

 体力の衰えは多少感じるものの、「まだやれる!」と気力は十分なのだが、ゴールの旗を目にして、はたと考え込んだ。

 「定年後の自分は、どうなるのだろうか?」

photo 定年間近――そのときあなたは?

定年間近で見えてくるもの――「定年再雇用」とはそもそも何か

 今の日本の社会では、どの企業も60歳前に「定年」を設定することはできない法律になっている。しかも、少子高齢化が加速している現状では、人手不足を解消する必要があること、そして公的年金の支給開始年齢が原則65歳に引き上げられたことを踏まえると、国は60歳以上の高年齢者を労働市場に留める施策を講じざるを得ない。その一つが「定年再雇用」である。

 「定年再雇用」とは、国が企業に対し、本人が希望するのであれば定年後も65歳まで雇用することを義務付けた制度である。2013年4月から施行されており、今や60歳から64歳までの高年齢者の80%以上が何らかの形で働いている。

 他方、社会保障制度というマクロ的視点に立てば、年齢が上がれば上がるほど関連する給付費は増えるものであり、18年度の医療費は、60歳代前半では1人あたり年間平均で約37万円、60歳代後半では約46万円もかかっている。(ちなみに、20歳代は10万円弱、30歳代で13万円弱、40歳代で18万円弱、50歳代で30万円弱。)人口の3割が65歳以上である現状からすれば、「支える者」を増やさなければ、日本の社会保障制度が破綻してしまうことは明らかだ。

 定年再雇用という仕組みは、60歳〜64歳の世代を「支えられる世代」から「支える世代」に移行させる制度改革としては必要不可欠なものであった。そして「支える者」になるためには、高年齢者自身、定年前と同じように、健康保険や厚生年金保険といった公的保険制度に加入をし、社会保険料を拠出しなければならないのは当然のことである(上記統計結果は、厚生労働省「令和3年版高齢社会白書」より)

再雇用で「支える者」となったときの社会保険料はどうなる?

 企業に義務付けられている「定年再雇用」の制度は、労働者が希望すれば65歳まで働ける場所を確保する仕組みを整えていればよしとされている。従って、よほど悪質でない限り、箱さえ準備しておけば、その形や大きさは企業側で決めることができるため、定年後の就労形態は嘱託やパートタイマーといった65歳を上限とする1年更新の有期雇用契約としている企業が多い。

 その際、勤務日数や勤務時間数、時給が減れば、当然、定年前より賃金は減少することになる。では、健康保険や厚生年金保険はどうなるのか?

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