定年後も「支えられる者」でなく「支える者」になる時代へ――再雇用、今さら聞けない「保険料や年金の扱い」はどうなるのか?(2/3 ページ)

» 2021年11月01日 08時00分 公開
[三戸礼子ITmedia]

 空白なく同じ企業に雇用される場合、企業と労働者の間には引き続き使用関係が継続することから、健康保険や厚生年金保険の資格も継続することになる。

 従って、賃金が減少したとしても、社会保険料の改定が行われるのは減少した月から4カ月目以降となるのが、通常の改定手続きである。

 ところが、定年再雇用の場合には特別な取り扱いとして、「同日得喪(どうじつとくそう)」という手続きがあり、再雇用の月から新しい賃金に見合った社会保険料に改定される仕組みを利用することができる。

 例えば、3月31日に定年退職を迎え、翌日の4月1日から定年再雇用となる場合、空白なく再雇用されるものの、一旦退職者として健康保険・厚生年金保険について4月1日付資格喪失の手続きを行い、同時に再雇用後の賃金をもって4月1日付資格取得の手続きを行う。そうすることにより、再雇用された4月から、新しい賃金に応じた社会保険料に改定できるというわけだ。

 上記は定年再雇用の仕組みを利用して得られるメリットだが、もちろんデメリットもある。傷病手当金や将来の年金は保険料分に応じた給付額となるため、保険料が下がれば給付額も少なくなる。もちろん、この仕組みを利用しないという選択肢もあるし、定年再雇用後の賃金が下がらないのであれば、そもそも利用する必要もない。

フリーランスという働き方も「支える者」としての生き方

 前述のとおり、定年再雇用の場合、定年後の就労形態等は企業の決定にゆだねられているので、企業と労働者との間で労働条件等についての折り合いがつかず、結果的に再雇用とならない場合もある。その場合、他の企業に再就職するか、もしくは、これまでの経験や知識・人脈を生かしてフリーランスとして就労を継続する、という選択肢もなくはない。

photo 選択肢は、人それぞれ

 後者の場合は、個人で法人を立ち上げない限り、企業に属する者(被用者)にはならないため、被用者の健康保険や厚生年金保険に加入することはできない。健康保険は国民健康保険に加入し、収入に応じた保険料(税)を支払うことになる。被用者が加入する保険とフリーランスが加入する保険では、次の通り、異なる点がいくつかあるので、フリーランスという働き方を検討する場合の判断基準の一つとされてはいかがだろうか。

 まず、国民健康保険には「被扶養者」という概念がない。定年まで被扶養者だった家族も国民健康保険の被保険者となる。これまでは保険料を徴収されることのない「支えられる者」であった家族も「支える者」として保険料(税)を支払う必要が生じる。

 また、国民健康保険には原則、傷病手当金制度は用意されていない。病気やケガ等で働けなくなったとしても、その間の所得保証はない。

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