リテール大革命

「持って出るだけ」無人店舗や、余った弁当を売るロッカー 「無人化・省人化」の最前線はJapan IT Week 秋(2/3 ページ)

» 2021年11月02日 11時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

“繊細なもの”に強い、ロッカー型無人販売機

 マースウインテック(長野県埴科郡)は無人販売機を提供している。

 無人販売機といえば、日本では古くから自動販売機が根付いている。最近では飲み物を販売するものだけでなく、軽食や日用品を提供する“自販機コンビニ”なども登場している。

 それらの多くは、購入した商品が受け取り口に落ちてくるような仕組みになっている。そのため、商品は形の崩れないもの、あるいは崩れにくいものに限定される。

 マースウインテックが開発した“ラストワンマイル”∞−Station Series「COLD+ H」「MV-20」は、通常の自販機とは異なり、落とすと無残な姿になってしまうような繊細なものでも販売できる無人コンビニマシンだ。

要冷蔵の商品を無人で24時間販売できる「COLD+ H」(左)と「MV-20」(右)。庫内温度は後述するタブレットで調整可能

 COLD+ Hは、ロッカーの形態で、顧客はタッチパネル式ディスプレイを通して商品を購入できる。ディスプレイから商品を選ぶと、その商品が入っている扉のLEDが赤く点滅する。顧客は、透明な窓から商品の確認もでき、問題なければ決済に進む。

 現金は使えず、交通系やnanacoなどのICカード、VISAタッチなどのタッチ式クレジットカード、PayPayやLINE PayなどのQRコードで決済する。QRコード化した店舗独自の割引クーポンも扱える。

 MV-20では、大型のタッチディスプレイで商品を選ぶ。選んだ商品はベルトコンベヤーで前方に送り出され、エレベーター方式で受け取り口まで降ろされる。自由落下ではないため、こちらも繊細な商品を取り扱える。もちろん決済方式はキャッシュレスだ。

 どちらも冷蔵機能をもっているため、野菜、果物、飲料、弁当、ケーキなど、自販機での取り扱いが難しいようなアイテムを販売できるのが特徴的だ。

 例えば、売れ残ってしまった弁当を格安で販売したいが、閉店の時間が来てしまったという弁当店や、明日には売ることができないが、今日中の消費なら問題ない売れ残りの野菜を売ってしまいたいスーパーなどが、食品ロスを防ぎつつ、売り上げを作るのに、COLD+ HとMV-20は貢献を見込める。

 商品の登録も簡単だ。オプションのタブレットへ扉番号と商品情報を設定するだけで、即時に反映される。

商品登録のほか、表示するサイネージの変更も、専用タブレットで行う。なお、タブレットをオプションにしたのは「複数台のCOLD+ HやMV-20ユーザーが余分な出費をせずに済むため」だという

 「会社を出て、自宅最寄り駅に着く頃には、スーパーは全部閉まっているんだよな。昼もコンビニ、夜もコンビニ飯か」と選択肢の少なくなりがちなビジネスパーソンにとっても、弁当店やスーパーの商品を買って帰れるのはありがたいのではないだろうか。

要冷蔵商品の受け渡しも、ロッカーで

 同社では他にも、同じ∞−Station Seriesとして「COLD+ U」を展示していた。これは、よくある受け取り用ロッカーと似たような外観だが、冷蔵機能を搭載している。そのため、置き配が難しい要冷蔵の商品を、好きな時間に受け取れる。QRコードで解錠するため、盗難防止にもなる。

個人間でも要冷蔵の荷物のやりとりができる「COLD+ U」。ECサイトでの利用も見込んでいる

 ECサイト運営者の活用も見込んでいる。注文のあった商品を、システムから発行されたQRコードを使ってCOLD+ Uに預け入れ、同じくシステムから発行されたQRコードを注文者に送信し、商品を受け取ってもらう。

 紹介した3つの販売機はいずれも、12月発売(月額利用料の発生しない、買い切り形式)とのことだが、店舗にとっても、忙しくて決まった時間内に食事が用意できないビジネスパーソンにとっても、食にまつわる課題解決の一助になるのではないだろうか。

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