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「自動運転バス」実用化から約1年、茨城県境町の変化は?自治体初(5/6 ページ)

» 2021年11月03日 08時43分 公開
[小林香織ITmedia]

運賃無料の「ビジネスモデル」

 上述したとおり、さかいアルマは運賃が無料であり、今後も運賃を徴収しない方針だという。現状は町の予算でまかなえているが、今後は新たなビジネスモデルの投入を検討しているそうだ。

ボードリーが提唱する「都心モデル」と「地域モデル」

 「当社では、エレベーターを整備するのと同様の考え方で自動運転バスを導入し、運賃を徴収しない2つのビジネスモデルを提唱しています。『都心モデル』は、企業が家賃や共益費として自動運転バスの費用を100%算出するもの。『地域モデル』は、50%を国が補助、残りの50%を自治体が捻出。あるいは、国の補助、自治体予算に加えて、観光施設などが自動運転バスの一部費用を負担するものです。

 境町で導入したいと考えているのは、この3者が費用を負担する地域モデル。これは自動運転バスを利用する顧客のニーズに基づいています。顧客は、移動手段にコストを割くより、移動した先でより多く消費したいはず。だから移動手段は無料で提供し、移動した先の施設などに『送客対価』として一部の費用を負担してもらう。住民が気軽に移動して、消費しやすい仕組みをつくれたらと思っています」

 現状、境町で地域モデルの導入が決まったわけではないが、さかいアルマのルート上にある主な観光施設などは行政がコストを負担しており、町民が町おこしに協力的であることから、実現可能性が高いという。

 さらに、今後はLINEと連携して、さかいアルマの予約のほか、店舗からの情報発信、クーポン配布、決済までをLINE上で行う仕組みも開発中だ。まだ稼働開始日は定まっていないが、これが動き出せば、購買行動の一連をデータ化できる。さかいアルマによる売上貢献を定量化し、クロスセクター効果(※)を算出することで、地域モデルを現実化したいというのがボードリーの狙いだ。

(※)クロスセクター効果:クロスセクターとは「多様な行政分野」を指し、地域公共交通が人々の移動を支えることで与える多面的な効果を意味する。

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