このパニックになる、ということが引き金となってペダル踏み間違い事故を引き起こしているケースこそ、実は高齢ドライバー特有の行動だ。ペダルを踏み間違えたことでパニックになり、ペダルを踏み替えなければならないのにそのまま踏み込み続けてしまう行為こそが、ペダル踏み間違い事故を増やしているようなのである。
脳科学によれば、脳は進化的に新しい部分から老化が進んでいくらしく、それは動きを抑制する機能を持つ部分、前頭前野と呼ばれる部分が当たるらしい。そのため感情や行動を抑制することができなくなっていくのは、脳の正常な老化現象ともいえるのだとか。
これはクルマだけでなく、歩行者や自転車でも起こる。赤信号に変わっているのに横断歩道を渡ろうとしている老人や自転車で交差点を横断する老人は、交差点に進入する直前に信号が変わっていることに気付いても、とっさに行動を変えることができずにそのまま進行してしまうことがあるのだ。
若年層のドライバーでもペダルの踏み間違いは起こしているが、重大事故は高齢ドライバーに比べて大幅に少ない。それはペダル踏み間違いに自ら気付いて、すぐにブレーキペダルに踏み替えることができているからで、止まり切れなかったとしても、軽度の衝突による物損事故で済んでいるからのようだ。
とはいえ、ペダル踏み間違いによる重大事故は高齢ドライバーだけでなく、30代から50代のドライバーも起こしている。高齢ドライバーだけが危険なわけではないし、ペダル踏み間違いによる誤発進を抑制すれば、大幅に安全性は高まる。
信号の見落としやボーッと別のことを考えている、という認知機能に問題がありそうな高齢者は運転能力に問題があるが、程度の差こそあれ前頭前野が老化している高齢者は、普段の運転能力には問題がない。慌ててミスしてしまうような状況さえリカバーできれば、運転を続けることができるのである。
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