2019年6月、国際労働機関(ILO)は「働く場での暴力やハラスメント(嫌がらせ)を撤廃するための条約」を採択しました。日本は「賛成」票を投じています。
しかしながら、今年6月に発効された条約に、日本は批准していません。「ハラスメントをなくそう!」と世界は動いているのに、日本は後ろ向き。その理由とされているのが、条約に組み込まれた「禁止」という2文字への日本政府のアレルギーです。
条約は、ハラスメントを「身体的、精神的、性的、経済的危害を引き起こす行為と慣行」などと定義し、それらを「法的に禁止する」と明記しているのです。
ご承知の通り、日本では20年6月1日より改正労働施策総合推進法、通称「パワハラ防止法」が施行されました。中小企業については、22年3月31日までを「努力義務期間」とし、22年4月1日から本格的に施行される予定です。
パワハラ防止法では、具体的な防止措置を企業に義務化し、厚生労働大臣が必要と認めた場合、企業に対して助言や指導、勧告が行われます。
しかし、罰則の規定はなし。つまり、ILOに批准すると「法的に禁止」→「損害賠償の訴訟が増える」という流れが予想されるため及び腰になっているのです。
本来、パワハラ防止法は「働く人」を守るためにあり、「ハラスメントは絶対に許してはいけない人権侵害」と広く認識させるために存在します。
なのに、日本政府は「企業」を守ることに必死です。いつも通りの「経済界への配慮」といわざるを得ません。日本は世界の潮流に乗り遅れるばかりか、逆行の道をたどっている。ジェンダー問題しかり、最低賃金しかり、ハラスメントしかり……。どれもこれも「人の尊厳」という、ごく当たり前に守られるべき問題なのに、「人」がないがしろにされ続けているのです。
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