元バイトAKBのラーメン店、産地偽装は返金で許されるのか?専門家のイロメガネ(4/4 ページ)

» 2021年11月17日 07時00分 公開
[及川修平ITmedia]
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課徴金を減額する方法とは?

 時として高額になる課徴金だが、減額される仕組みも用意されている。客に返金対応をした場合、返金額が課徴金から減額される。この返金の制度を企業が利用する場合、事前に返金の計画を消費者庁に提出し承認される必要がある。

 客側が損害賠償請求をするのはハードルが高い問題があると述べたが、この問題の解決策として、事業者が自主的に返金を促す仕組みとなっている。

 ほかにも課徴金が減額されるケースとして、消費者庁から指摘を受ける前に自主的に違反があったことを申告した場合がある。

 今回のラーメン店のケースでは、店舗のホームページにはすでに消費者庁に届け出ているとあり、返金に応じることも記載されている。景品表示法適用の調査がどの程度進んでいたか不明だが、今後何らかの処分が下される可能性もあり、その際に自主的な申告が処分に影響することも考えられる。

 このように、表示を偽装した場合「見つかったら返金すればいい」では済まされない。事業者にとって課徴金を課される大きなリスクとなる。

消費者団体からの訴訟リスク

 産地偽装など消費者を欺くようなトラブルを企業が起こした場合、消費者団体から訴訟を受けるリスクもある。

 景品表示法では法に違反する広告などについては、各地の消費者団体も消費者庁に代わり差し止めの請求や訴訟ができると規定されている。

 過去にはクロレラ療法をめぐる広告について、サン・クロレラ社に対して使用差し止めの訴訟などが提起された。「病気と闘う免疫力を整える」「自律神経失調症改善作用」などの記載は優良誤認にあたるとして、広告の差し止めが認められた。

 消費者団体から問題を指摘され、是正の請求や訴訟が提起されるような事態となれば、多数のメディアで問題を起こした企業として報じられて社会的信頼を損ねる。このようなリスクも事業者にとっては当然避けるべきだ。

産地偽装は重大なコンプライアンス違反である

 表示をめぐる問題はひとたび顕在化すると大きなペナルティが課せられ、信頼失墜から業績に大きなダメージとなって跳ね返る。

 景品表示法では、事業者に対して社内で法の考え方の周知や啓発活動を行うこと、法令順守の徹底などを求めている。不当表示になるかどうかは仮に事業者が知らなかったとしても行政処分の対象となる。例えば仕入れ先が産地を間違っていたとしても、その食材を使用した事業者が処分の対象となりえる。

 事業者としては今回のニュースを対岸の火事と考えず、違反行為はないか、取引先との契約関係を改めて確認するべきだろう。

筆者:及川修平 司法書士

福岡市内に事務所を構える司法書士。住宅に関するトラブル相談を中心に、これまで専門家の支援を受けにくかった少額の事件に取り組む。そのほか地域で暮らす高齢者の支援も積極的に行っている。

企画協力:シェアーズカフェ・オンライン


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