上場企業の経営トップが、インサイダー取引の恐れがある株取引をするという今回の騒動。田中社長の対応ばかりに目が行きがちだが、事案の発覚から半年後に公表したバルミューダの対応に問題がなかったのだろうか。
品谷教授は「決して褒められた対応ではない」と話す。同社には計3人の監査役がおり、うち一人は弁護士だ。
「弁護士が監査役として在籍していながら、今回の事案が発生したのであれば、初動対応として適切ではないし、社内統治が機能しているとは言い難い」(品谷教授)
事案の発覚から公表まで約半年もかかった背景について、品谷教授は大きく二つの可能性があると指摘する。一つ目の可能性が、監査役が3人とも社外監査役だった点だ。このため、社内の事情に精通しておらず、適切な対応ができなかった可能性がある。
二つ目は、内部監査の機能が弱かった可能性があることだ。品谷教授はバルミューダの発表資料に記載された一連の経緯を見て「社外監査役が機能していない場合、内部監査の役割が重要になるが、うまく機能していなかった可能性がある」と指摘した。
再発防止に向けては、社内取締役に監査役を招き入れ、内部監査の機能を強化することを挙げた。
会社法に基づく「監査役設置会社」から「監査等委員会設置会社」に変えることで「監査役に取締役会にも出席してもらい、取締役の立場から社長に意見できる環境を整えることが重要だ」とした。
さらに、他社から内部監査の業務経験がある人材を登用することで、内部監査の機能を強化し「社長にものを言える、お目付け役としての強い内部監査の仕組みを構築する必要がある」とした。
一連も問題を巡っては、取引が発覚した時点で社内処分の検討などを適切に行わなかったとして、バルミューダは寺尾玄社長に対しても、減給10%(3カ月間)の処分を出した。
同社は再発防止に向け「社外も含めた役職員に対する研修を通じたコンプライアンス、ガバナンス意識の強化に加え、適切な情報開示を行っていく」とコメントしている。
ITmedia ビジネスオンライン編集部は田中社長の所属元であるジンズホールディングスにも事実関係などを確認したものの、同社は「バルミューダでの事案であるため、回答できる立場にない。コメントを控えさせていただく」と回答した。
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