練習会へのチラシ配布や自社ECサイトで販売してみたものの、一向に反応がない状態が続いたという。「全く売れない」と友人に相談したところ、学会に持ち込むことを提案され、13年の冬に日本内視鏡外科学会にブースを出展した。
トイレも行けないほど多くの医師が集まり、単月の売り上げは200万円に上った。安価と利便性の高さが売りとなり、1000万、2000万、4000万と14年までに大きく売り上げを伸ばす。業績が上向いている中でも、高山社長は次の一手について思考を巡らせていた。
「腹腔鏡手術の練習キットは、頻繁な買い替えが発生する製品ではないので、いつか頭打ちになる。手術の練習というラインで何か次の挑戦ができないか考えていました」(高山社長)
学会を通して「医療業界で商売を続けるには、消耗品がいい」と気付いた。医師に相談はしていたものの、なかなか形に落とし込めずにいたという。
臓器にたどり着いたのは、ある医師からの「練習用の臓器は消耗品」というアドバイスだった。一般的に練習用に使われる臓器は豚の臓器や樹脂臓器を使用するものの、価格や衛生問題、動物愛護の観点から問題があった。
模擬臓器は売れるかもしれないと思いつつ、何で作ればいいのか悩んでいたという。そのアイデアは意外なところから降ってくることに。15年、腹腔鏡手術の練習キットが「渋沢栄一ビジネス大賞」の特別賞に選ばれたのだ。
「大賞を受賞したのがこんにゃくを作っている会社だったんです。何気なく眺めていたのですが、以前レバ刺しで食中毒が発生したときに、赤こんにゃくを代替商品として販売していたというニュースが浮かんできました。こんにゃくで臓器が作れるかもしれないとひらめいた瞬間でした」(高山社長)
実際に、医師に電気メスでこんにゃくを切ってもらったところ「切れ味は臓器っぽい」という反応がもらえた。しかし、持ち上げるとちぎれてしまうし、糸で縫えない。課題は山積みだった。そこから2年間ほど開発に専念することに。こんにゃくをベースに食品添加物などを混ぜてみたものの、最初はなんの成果も得られなかったという。
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