もしスマホ端末で世界的なシェアを取りたいのであれば、自社でスマホ製造も手がけることが必須となるだろう。しかし、バルミューダフォンの販売目標の水準からみても、世界はおろか国内でも大きなシェアを取ることはそもそも考えていないことが明らかだ。小ロットの生産で成功を収めるのであれば、多少一台あたりの製造原価が高くなっても、生産・製造を外部に委託するのは合理的だ。
バルミューダの低コスト参入を実現する要因のもう1点は、営業コストだろう。今回、バルミューダフォンは南青山に旗艦店こそ出すが、販売・マーケティングの主翼を担うのはキャリアとして独占販売権を有するソフトバンクとなるだろう。そうすると、ランニングコストとなり得る営業面でも、携帯キャリアの力を借りて低コストな参入ができたといえるのではないだろうか。
このように考えると、仮にバルミューダフォンが全く売れなかったとしても、それまでに投資した額が同社の事業規模に対してわずかであることから、会社の財務基盤が悪化するほどではない。そして仮に早期の撤退となったとしても、携帯用の店舗を多重展開したり営業員を雇ったりしていないことから、撤退コストも小さくまとまると考えられる。
そのように考えると、バルミューダのスマホ端末関連事業への参入は極力リスクを抑えたものであり、巷(ちまた)での悲観と経営成績にギャップが生まれやすい状況であるともいえる。
酷評という嵐の中で門出を果たすバルミューダフォン。その姿からは、強靭(きょうじん)さを示すデモンストレーションで、窓ガラスに見事なヒビが入ってしまい株価が急落した米・テスラの新車発表会を彷彿(ほうふつ)とさせる。ただし、テスラの“がっかり会見”の後の成長は凄まじいものであった。バルミューダフォンも同じ道をたどるのか。本日からの売れ行きに要注目である。
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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