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高学歴でも「頭がいい」とはいえない 「仕事ができない人」に欠けている要素対人スキルが重要(4/4 ページ)

» 2021年11月29日 06時00分 公開
[桂木麻也ITmedia]
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真の学歴とは何か

 今回のコラムで、何回か「高学歴」という言葉を使ってきた。日本は学歴社会といわれるが、その意味合いは「何を学びどんなトレーニングを受けたか」という履歴ではなく、「どんな学校に所属してきたか」という履歴である。受験勉強に疲弊して、大学入学後はろくに勉強もしなかったが、学校名に助けられて就職を果たしたという人もいるであろう。いったん就職すれば、ビジネスの遂行に必要な勉強は必須となる。技術系の企業に就職すれば、文系の人間でもテクノロジーについてある程度勉強しなければならない。理系の人間であっても、所属部署によっては企業法務や財務・税務の知識を求められることになる。

 目下、テクノロジーの進化スピードが非常に早く、それが社会に大きな変化を与えている。テクノロジーの進化は企業にとって新しいビジネス機会を創出するが、それに呼応して規制当局も動くため、何が機会で何が制約となるかは常に学んでいかなくてはならない。例えばSDGs、ESGだ。今や小学校の教科書でも語られるSDGsだが、持続可能な開発目標として17の世界的目標、169の達成基準などが国連で採択されたのは2015年と、わずか6年前の話である。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取って作られた言葉である。

 気候変動問題や人権問題などの世界的Challengeが顕在化している中、SDGsの観点から企業行動にESGの視点が求められるようになっている。この配慮ができていないと投資家から敬遠され、企業価値の毀損(きそん)につながるという新たなリスク領域として各企業はその対策に力を入れているところである。

 このような新しい学びの領域は、企業に就職したのちに行っていた従来の学びとは根本的に異なることにお気づきだろうか。後者は、所属した企業・部署の先輩であれば誰でも知っていた内容であるが、前者は社長以下、誰も知識がなくまさに手探りで学んでいる最中である。これは若手や新入社員にもある意味大きなチャンスである。その領域を深掘りしてフロントランナーになることで、企業内のリーダーになることができる。その意味で、「私はこのようなことを学びトレーニングを積んできました」という真の「学歴」はこれから大きな武器になると思われる。

 テクノロジーの進化は新しい価値観をもたらし、それが旧来の価値観と相まって世の中はますます多様になっていく。そして、そのような多様な社会における利害関係は、必然的に複雑なものとなる。そしてそんな社会は、「AnswerではなくSolutionを導き出すことができる」「インターパーソナルスキルが高くて他人にInfluenceを与えられる」「学びの姿勢を持ち続けられる」という「仕事のできる人」を待っている。仕事のできる人の要件はブレットポイントでわずかに3点。エレベーターピッチとして皆さんの心に残れば幸いである。

著者プロフィール

桂木麻也

 インベストメント・バンカー。メガバンク、外資系証券会社、国内最大手投資銀行等を経て、現在は大手会計会社系アドバイザリーファームに勤務する。ASEANでの7年に及ぶ駐在経験から、クロスボーダーM&A及び、ASEAN財閥の動向について造詣が深い。慶應義塾大学経済学部卒、カリフォルニア大学ハーススクールオブビジネスMBA保有。

 著書に『ASEAN企業地図 第2版』『図解でわかるM&A入門』(いずれも翔泳社)がある。


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