総務における「スキルの深化」とは、戦略総務の実現にあると考えている。
「総務が自ら考え、自ら会社を変えること。そのために、まず総務自身が変わること」――これは、筆者が所長を務める戦略総務研究所における、総務の先にあるべき「戦略総務」に関する定義である。
そして戦略総務に必要なのは、会社をどのように変えるのか、その変わった後の「ありたき姿」を描くことである。もう少し総務の実地寄りに考えれば、どのような働く場を作りたいか、はやりの言葉で表現すれば、「最高のEX(Employee Experience)」をどのように実現するか、であろうか。
こうした、ありたき姿を構想することが、まずは必要となる。おそらく、今までの総務では、決められたことを粛々と守り、逆に変化を起こさせない「守りの総務」が主流であったのではないだろうか。つまり、現状を超える、理想形を目指すこと、さらには、ありたき姿を考えることはほとんどなかったのではないだろうか。
しかし、世の中はVUCA時代。何が起こるか分からない世の中で必要なのは、環境適応、適者生存である。今の環境下で考えられるありたき姿を描きつつ、そこに向かって変化していかないと、企業の存続が難しい。企業の基盤整備を担う総務も、その企業のありたき姿を実現するために、どのようなありたき職場を実現していくのか。まずは、このありたき姿の構想する力が求められるのである。
一方、「現実」はどうなっているのか。日々総務が目の当たりにしている「現実」と、ありたき姿という「理想」、両者のギャップが、まず解消すべき課題となる。このギャップ、つまりやるべき仕事を見つけ出すにも、先に記したありたき姿の構想力が必要となる。現状がどうもうまくいっていない、とはいっても、その先に何を目指すかが明確でないと、どう現状を変えたらよいかが定まらないのだ。
作家の山口周氏は、課題解決能力より、課題発見能力が必要とされる、このように指摘している。総務においてもまさにその通りであり、課題が見つからない限り、その先の変化には到達できないのだ。
課題発見能力は、一部テクノロジーの活用力ともつながっている。人手をかけて現状を可視化するには手間も時間もかかるため、テクノロジーを活用することで、データで現状を可視化していくようになるのだ。今や驚くほどテクノロジーが進化しており、さまざまなツールが表れている。テクノロジーの使い手になり、容易に現状が可視化できるようになるのだ。
DXと盛んに言われるようになってきた。このDXにおいても、まず必要となるのが、どうなりたいか、何を目指すのかの構想である。何を目指すのか、それはなぜか。これから始まるDXも、戦略総務による、ありたき姿の構想が必要となるのだ。
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