攻める総務

外資系では「プロ扱い」なのに、日本では「何でも屋」 攻めの総務に求められる心構え総務のための「オフィス」再考(1/2 ページ)

» 2021年12月17日 07時00分 公開
[金英範ITmedia]
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 バックオフィスのDXに差が生まれています。経理、法務、人事などが積極的にテクノロジーを導入し、活用している一方、総務は一番後手に回っているのではないでしょうか。「何でも屋」といわれ、社内のどの部門にも当てはまらない雑務が常に降ってくる部署です。業務の体系的な整理もままならず、ジョブ(ミッション)として確立されていないので、残念ながら業務プロセスのDXは進んでいないでしょう。

外資系企業では、総務はプロの社内サービス部門

 外資系企業やグローバル展開している一部の日本企業では、総務部はプロの社内サービス部門として機能しています。「顧客は社員である」と公言していて、専門性の高いジョブを担っているプロだと社内からも認知を受け、業務を遂行しています。このことはグローバル企業では常識であり、業務の効率化のためテクノロジーも積極的に導入している企業も多いのです。

 筆者は外資系企業7社で総務を25年ほど経験しましたが、ほぼ全ての会社で、毎年と言ってもいいくらいに、新しいスタンダード(慣習)やテクノロジー、ツール導入などの話がシャワーのように降り注いできました。その対応に日本国内であくせくしながらも新しいチャレンジ、気付き、失敗などを繰り返していました。そうした経験ができたことは、今思えば貴重だったかもしれません。

 一方で、これは日本企業でもあまり知られていませんが、実は自社の海外拠点では、総務部(コーポレートサービスと呼ばれるケースが多い)が専門サービス能力の高いチームとして存在していることがあります。某グローバル系の日本企業で総務をしていたとき、海外出張しながら現地の総務のレベルを確認、10カ国ほど回りましたが、このことをリアルに感じました。

 自社の“海外”総務の業務内容とレベル感を確認したことがある方ならご存じの通り、海外拠点(欧米、オーストラリア、香港、シンガポールなど)では、意外と専門性を持ってきちんとサービスを実行しており、ローカルレベルでテクノロジーを導入するなど、学ぶべきことを多いのです。

 本社からの指示がなくても、それらの地域での競争原理を考慮したり、現地で優秀な社員を獲得したりするためには当たり前のことなのです。

社員が我慢を強いられる状況が、イノベーションを阻害

 このようにグローバルで見てみると、総務のプロ化ができていないのは一部のアジア諸国と日本国内だけであることが分かり、がく然とします。日本では終身雇用、年功序列のシステムをなかなか変えられず、できる範囲の微修正にとどまっているように見えます。直近およそ30年間、総務はその影響をストレートに受け、相変わらず右へ行ったり左へ行ったりの「何でも屋」を続けています。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 その結果、オフィス環境や社内ビジネスサービスの進化が後回しになってしまい、「皆で我慢すれば乗り越えられる!」という昭和の習慣で、苦労を美徳化してきました。それでも、全ての社員が日本人ならチーム力で乗り越えられるかもしれません(と日本育ちの筆者は感じており、それを信じたい気持ちもあります)が、残念ながら日本人だけで本社が形成されるグローバル企業の未来はそれほど明るいとは思えません。

 筆者が知る限り、多くの日本企業の現場では、我慢を強いられた社員が生産性を落とすだけでなく、イノベーションも阻害している状況が見受けられます。社員がグローバル競争に対するハンディキャップを背負わされたような状況です。自社の海外オフィスやサービスの話を聞きつけて「うらやましい」と感じる社員すらいます。

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