「204円」弁当に「1080円」おにぎり! ハイレベルすぎるスーパー弁当の知られざる“進化”長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)

» 2021年12月23日 09時30分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

ハイレベルなサンマの弁当を開発

 まず、お弁当・お惣菜大賞における常連組の取り組みを見てみる。

 マミーマートは、埼玉県を中心に東京都、千葉県、群馬県、栃木県に「マミーマート」及び「生鮮市場TOP」チェーン約80店を展開する中堅の食品スーパーだ。競合に、ヤオコー、ベルクといった強力なチェーンがある。同社がとった差別化戦略は、どこよりも食べておいしい弁当や総菜を提供することだった。

マミーマートの外観

 21年におけるお弁当・お惣菜大賞の弁当部門には、マミーマートの「骨まで食べられる三陸産秋刀魚と秋の味覚御膳」が輝いている。しかも、同社は8年連続で何らかの賞をとっている。関東で最もグルメ度が高いスーパーの一つだ。製造はグループ会社の彩裕フーズが担う。

マミーマートの「骨まで食べられる三陸産秋刀魚と秋の味覚御膳」

 骨まで食べられる三陸産秋刀魚と秋の味覚御膳は、丸ごと1匹のサンマの塩焼が入っている。それだけでもインパクトがあるが、メザシのように頭からしっぽまで食べられてしまう画期的な弁当だ。昨年に開発した商品で、今秋は2年目の販売となる。

 開発の動機として「コロナ禍で移動制限が求められる中、何とか秋の季節感を出せるものをと検討して、サンマをシンプルに塩焼で提供するのがベストと考えた」と同社・広報は説明する。実際、年配の顧客からはサンマを食べたいとの要望が多く寄せられていた。

 しかし、お年寄りに骨のある魚は危なくて食べさせられないと、買い控えする主婦も多い。

 そこで、水産加工食品などを扱うモリヤ(宮城県気仙沼市)が開発した、魚の骨を脆弱(ぜいじゃく)化する特許製法を施したサンマを使った。高温真空調理により、身にダメージを与え過ぎずに骨が軟らかくなる加工で、風味や栄養は損なわれないという。

 実際に食べたところ、まるでシラスのように骨があるのかも分からないほどだった。

 当初は、骨まで食べられるという利点が伝わらず売れ行きは低調だった。しかし、粘り強くPOPなどで宣伝を続けた結果、538円という価格帯だが売り上げは2位にまで浮上した。これまで累計で17万食を販売している。そして現状、同様の商品が大手スーパーの売り場に並ぶようになっている。

 今後は「骨まで食べられるお魚シリーズ」として訴求する予定で、年明けに第2弾のホッケが登場するという。

 21年は、この他にも丼部門で「自家製辛味噌で食べる焼き鳥丼(かわ・もも)」と「お肉たっぷりスタミナ丼」が入選するなど、彩裕フーズは計9作が入賞した。

マミーマートの「自家製辛味噌で食べる焼き鳥丼(かわ・もも)」(出所:お弁当・お惣菜大賞公式Webサイト)
マミーマートの「お肉たっぷりスタミナ丼」(出所:お弁当・お惣菜大賞公式Webサイト)

 20年も、惣菜部門で「浜名湖産生青のりと藻塩のコロッケ」、麺部門で「うまみ溢(あふ)れるごぼう天そば」と2部門で最優秀賞を獲得している。19年はパン部門で「5種野菜とローストビーフバジルポテト」が最優秀賞を受賞した。

マミーマートの「うまみ溢れるごぼう天そば」(出所:お弁当・お惣菜大賞公式Webサイト)
マミーマートの「浜名湖産生青のりと藻塩のコロッケ」(出所:お弁当・お惣菜大賞公式Webサイト)

 部門に偏りがなく、ハイレベルな商品をコンスタントに送り出せるのはなぜか。彩裕フーズの「他社に無いもの、自社にしかできないものを原料から作ること」というモットーが、組織に浸透しているからだろう。原料から考えることでオリジナリティーが出せる上に、従業員の加工技術が向上。コスト管理がしやすく利益も確保できるのだ。

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