地道の交渉の末、ようやく3社間で新機種の製品化にめどがついたが、部品調達という難題が残っていた。スマホ全盛の時代になり、ガラケーの製造に必要な部品を製造するメーカーが激減していたのだ。
例えば液晶の場合、ガラケーが主流の時代は、精細さ、コンパクトさ、省エネ度などで各社が異なる特徴を打ち出し、しのぎを削っていたため、選択肢が豊富だった。それが、スマホが主流になると、ディスプレイサイズが大型化。ガラケーに適したサイズの液晶は業界内では“絶滅危惧種”になっていた。物理キーや折り畳み部の「ヒンジ」も、ガラケー時代の終焉(しゅうえん)とともに生産を終了していたメーカーが多く、調達面でも困難に直面した。
日本中のメーカーに相談し、限られた選択肢の中から何とか必要部品をそろえることができた。そのような困難な状況の中でも、近藤マネジャーは「ユーザーに長く使ってほしい」との思いから、長く製品をサポートできるよう、入手しやすい部品を中心に調達した。
現在、ガラケーユーザーは減少傾向にある。部品を長期的に提供する環境を構築し、製品をいかに長くサポートするかという体制づくりが今後の課題となりそうだ。
自身の復活にかける熱い思いやファンの期待によって、度重なる困難を乗り越えることができた今回の開発劇。苦労の中にも収穫はあったようだ。それはキャリア主導での製品企画という点だ。
ガラケー時代はキャリア主導で企画する機種や、キャリア側から各社に機能をリクエストし、製品に反映するという工程が存在した。それがスマホ時代になり、韓国サムスンの「Galaxy」、ソニーの「Xperia」、米アップルの「iPhone」に代表されるように、各社が自社内で企画し、ブランディングから販売まで手掛けるケースが増えた。
このため、キャリア側は販売網や開発に必要なデータの提供など、徐々に各社のサポート役にとどまるように。キャリア主導での製品企画の機会は、ガラケー時代に比べると減少した。現在、キャリア主導の企画は「子ども用機種くらいだ」という。
「久しぶりのキャリア主導の大型企画ということで、まさに商品企画という役割を体現でき、楽しかった。自分の背中を後輩たちに見せることができたのもよかった。後輩たちも『こうすれば実現できる』というリアルビジョンを持ってもらえるとうれしい」(近藤マネジャー)
近藤マネジャーは「4年に渡る長期のプロジェクトで、課題もあったし、必ずできる保証もなかったが、諦めない熱意と、いろいろな人に助けてもらい、ゴールまでたどり着けた。どこか1カ所でもつまづくと実現できなかった。今回の経験を、部下だけなくKDDI社内の資産にしたい」と笑顔を見せた。
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