2022年、鉄道はどうなる? 5年半ぶりの「新幹線開業イヤー」杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/9 ページ)

» 2022年01月02日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

JR只見線復旧 観光の取り組みに期待

 11年の「平成23年7月豪雨」で不通になった只見線の会津川口〜只見間について、22年の秋頃に運行再開の見通しとなった。

 11年間も不通だった理由は、当初、JR東日本がバス転換する意向を示したからだ。復旧費用は約85億円、工期は4年以上。それだけ資金と時間を費やして復旧しても赤字路線になる。

 黒字になる見込みのない部門に投資するなんて民間企業にはあり得ない。株式公開企業なら、株主が反対する。株式とは投資の見返りに利益を分配してもらう仕組みだから、分け前が減る事案は賛成しない。しかしJR東日本は公共交通を担う責任がある。だから「バスの運行で責任を果たしたい」と提案した。

 同じ年の3月に東日本大震災が起きたばかり。ここでも鉄道復旧に明暗があった。赤字企業の三陸鉄道などは自治体と国の支援が行われ、ほとんど国の支援で復旧できた。しかし、黒字企業のJR東日本の路線について国は支援できない。鉄道軌道整備法で、国が被災路線を補助できる企業は経営困難な会社に限定された。黒字企業に資金援助した上で黒字だった場合、補助金によって配当や役員報酬が支払われたように見えるからだ。

 この法律は国策としては不公平を解消するように見える。しかし、鉄道事業者としては、「国の支援がないなら赤字路線を切り捨てよう。交通事業の責務はバスで良い」となる。実は国も「地域に見合った交通を整備すべき」という考え方で、これは暗に「お金と手間がかかる鉄道じゃなくてもいいでしょう」だ。

 しかし、地域としては鉄道で存続してほしい。特に只見線の被災区間沿線にとっては、ほかの地域との連絡手段が国道252号と只見線しかない。鉄道はトンネルが多く積雪には強い。国道はほとんど地上で積雪時に使えない。鉄道をふだん使う人がいなくても、ライフラインのひとつとして重要だ。

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