会社のトップが大好きな「戦国武将に学べ」が、パワハラ文化をつくったと感じるワケスピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2022年01月11日 11時52分 公開
[窪田順生ITmedia]

現代版の「捨て奸」

 日本人はこういう「自己犠牲」が大好物で、時代劇ドラマなどでもクライマックスなどで描かれるが、ちょっと冷静になって周囲を見渡していただきたい。令和日本でも皆さんの会社、職場で当たり前のように「捨て奸」は行われていないだろうか。

 不祥事が発覚したが、社長の引責辞任を避けるため、現場が上に報告していなかったことにした。

 本当は部長が指示をしたのに、現場社員が独断で動いたことにしてミスの責任を1人でかぶせられた。

 上司から命じられて仕方なく不正に手を染めていたのに発覚した途端、責任を押し付けられてクビにされた。

(出典:厚生労働省)

 こんな「トカゲの尻尾切り」をする企業が定期的に報道される。筆者も報道対策アドバイザーとして、さまざまな企業の不祥事などの現場に立ち会ってきたが、現代版の「捨て奸」を幾度となく目撃してきた。

 なぜ中世で編み出された「君主を守るために兵が犠牲になる戦い方」を400年を経たサラリーマンたちが忠実に再現をしているというと、「組織ってのはそういうものだろ」という教育を受けているからだ。戦国武将に憧れて、その戦い方を参考にしている社長のもとで、労働者も知らず知らずのうちに、「会社を守るためには社員が犠牲になる戦い方」こそが絶対に正しいということを刷り込まれている。

 「そんなバカな話があるわけがない」と失笑する方も多いが、マネジメント層の戦国武将への過剰な憧れ、神格化というものが、部下の思考にも影響を与えて過剰な「自己犠牲」を促すようになるというのは、既に歴史が証明している。

 それは、太平洋戦争における「楠木正成」だ。

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