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» 2022年01月12日 07時00分 公開

美容師の働き方はなぜブラックなままなのか──土日休みにこだわる人気店が、業界に問う課題3年で5割以上が辞める(3/5 ページ)

[酒井真弓,ITmedia]

ドン・キホーテで学んだ真の接客

 海野さんは、専門学校を卒業後10年間美容師として働き、30歳のとき転職を決意した。安い・長い・ツラいの三拍子そろった職場環境に、心も体も金銭面も限界だった。美容師に戻るつもりはなかった。

 転職先は、総合ディスカウントストアのドン・キホーテだった。ここでの経験が海野さんを変えた。美容師業界で凝り固まった考え方が全て崩された気がしたという。

10年間の美容師を経験したのち、ドン・キホーテに転職(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 「美容師は接客のプロだと思っていました。でも、世間はもっと広かった。僕の上司は、初期不良や故障品の相談にいらっしゃるお客さんに対して、『すぐに交換します』といえる人だったんです。『お客さんを待たせるくらいなら販売証明なんて後で探せばいい、もしなかったら、それはそれでお客さんが時間を使わなくて済むならいいじゃないか』と。お客さんの気持ちになれるって、かっこいいなと思ったんです。売り場を作るときも、お客さん目線でした。

 当たり前のことだと思われるかもしれませんが、そこに美容師時代には気付かなかった接客の全てを見た気がしました。昔の僕は、お客さんにカラーのやり直しをお願いされたら嫌な顔をしていたと思います。10年美容師をやってきて、ちょっと腐ってきていた部分があったんですよ」

 ドン・キホーテで働いた2年半、家電売り場の責任者を任され、中目黒の本店に栄転もさせてもらった。ビジネスレベルのPCスキルも身についた。周囲は一生懸命で、アルバイトもみんな夢を口にしていた。海野さんは、そういう人たちと働くことで心が洗われていくのを感じていたという。

 同時に、街なかで夜中まで明るい美容院が目に入ると「あそこにいたんだけどな」と思うようになった。そんなとき、独立する美容師仲間から一緒にやらないかと誘われた。

 大きな美容院で働くのはトラウマになっていたが、小さな店ならまた挑戦できるような気がした。「ドン・キホーテは初めて『職場が嫌になった』という理由じゃなく、辞めました」と海野さんは話す。

洗脳に近い美容師業界の既成概念を覆す

 海野さんの目標は、時代遅れの慣習にまみれた美容師業界を覆すことだ。

 「この業界だけで長く働いていると、試用期間は3〜4年が当たり前、夜遅くまで残って練習するのが当たり前、土日は休めなくて当たり前といった既成概念に支配されていきます。洗脳に近いです」

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