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» 2022年01月12日 07時00分 公開

美容師の働き方はなぜブラックなままなのか──土日休みにこだわる人気店が、業界に問う課題3年で5割以上が辞める(5/5 ページ)

[酒井真弓,ITmedia]
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緊急事態宣言下、全ての思いを託して送ったメッセージ

 海野さんは、「効率良く仕事ができているのは、SALON BOARDのおかげと言っても過言ではない」と語る。

海野貴裕さん(ヘアガーデン テンダネス代表兼オーナー)

 特に重宝しているのは、メッセージ機能だという。顧客データ分析機能と併用すれば、来店回数など何らかの条件で絞った人たちだけに特別なメッセージを送れる。

 海野さんのマイルールは、リクルートが用意した定型文を使わないこと。「またのご来店を心よりお待ちしております」なんて送ったらおしまいだ。詩をしたためるように、タイトルや本文、改行や句読点の位置にもこだわっている。

 送るのは、ここぞという時だ。20年5月、1回目の緊急事態宣言が出てすぐのタイミングで、1週間先の予約が空いた。どうしようもない話かもしれない。だが、「自営業は一つの失敗が死に直結する」と考え、命懸けで予約が取れない店を築き上げてきた海野さんは、危機感で頭がいっぱいになった。そのとき全ての思いを託して、「このメッセージが皆さまに届きますように」と題したメッセージを送った。送った瞬間、開封率は通常の約5倍に伸びたという。

緊急事態宣言中に海野さんがお客さんに送ったメッセージ

秘策は、使っているシステムを好きになること

 海野さんの美容院は、すでに新規顧客やリピーターを増やすフェーズを脱している。技術や接客を磨くのは大前提として、そんな海野さんだからこそ言える、顧客を増やすための秘策は何か。それは、とにかく使っている顧客管理システムを好きになることだという。

 海野さんは、SALON BOARDの顧客管理機能を使い、全顧客のデータを一つの項目も漏らさず正確に入力している。顧客データを眺めていると、お客さん一人一人の顔や会話が浮かんでくるという。だから、全てのお客さんをフルネームで呼べるし、細やかな接客ができる。

 データを整備することの大切さは、ドン・キホーテで学んだ。

 「僕は守りを固めないと攻められない性格で、倉庫整理や在庫管理をしっかりしてから売るタイプでした。そこを頑張っても売り上げに直結しないだろうと思われるかもしれませんが、倉庫が散らかっていると在庫管理がしにくくなり、滞留品が増えてしまいます。巡り巡って売れなくなるんです」

 今は、例えば一人でも誕生日のデータが抜けていると、「このままでは眠れない」と思うほど落ち着かないという。

 「誕生日を入力していないと、そのお客さまの年代が分かりません。データは正確に打ち込んだものが蓄積されてこそ、ようやく使いものになる。一朝一夕では無理。とにかく最初から意識して打ち込むことが大事なんです」

 積極的にツールを活用し、当たり前とされている働き方に疑問を投げかける海野さん。課題の多い美容業界の変革の糸口が、その姿勢にあるのかもしれない。

著者:酒井真弓

ノンフィクションライター。アイティメディア株式会社で情報システム部を経て、エンタープライズIT領域において年間60ほどのイベントを企画。2018年、フリーに転向。現在は記者、広報、イベント企画、マネージャーとして、行政から民間まで幅広く記事執筆、企画運営に奔走している。日本初となるGoogle Cloud公式エンタープライズユーザー会「Jagu'e'r(ジャガー)」のアンバサダー。

著書『ルポ 日本のDX最前線』 (集英社インターナショナル) 、『DXを成功に導くクラウド活用推進ガイド CCoEベストプラクティス』(日経PB)、『なぜ九州のホームセンターが国内有数のDX企業になれたか』(ダイヤモンド社)。


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