喫茶店数は30年で半減! 「純喫茶」はこのまま絶滅してしまうのかスピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2022年01月25日 09時24分 公開
[窪田順生ITmedia]
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伝統とは絶えず革新を続けること

 こういう失敗例を見ると、「純喫茶文化を守れ」というムーブメントは嫌な予感しかなしない。昭和レトロが好き、喫茶店でゆったりとした贅沢(ぜいたく)な時間を過ごしたいという愛好家にはもちろんいい。

 しかし、「着物文化を守れ」と同じく普通の人にはあまりピンとこない。京都や鎌倉など観光地に行ったとき、着物レンタルだけするように、メディアに取り上げられて話題になった純喫茶にわっと押しかけて終了で、普段はスタバやコメダに行く。愛好家が「純喫茶文化を守れ」と叫ぶほど、純喫茶はレアで敷居の高いものとなって、衰退していくという皮肉な現象が起きてしまうのだ。

大手カフェチェーンが増えていき、順喫茶は姿を消すのか

 では、どうするか。純喫茶側が変わっていくしかない。これまでの喫茶店がそうしてきたように、時代の変化に合わせて、柔軟に業態を変えていく。例えば、なぜコロナ禍でもコメダに行列ができるのかというと、Wi-Fiや電源もあって仕事もできるし、仕切り壁もあって席もゆったりしているので居心地の良さを感じる人が多い。食事も充実しているのでファミリーも利用できる。

 そういう時代のニーズを真摯(しんし)に受け止めて、少なからず反映して「新しい純喫茶」をつくっているのだ。実際、創業60年を超えるある老舗純喫茶は、Wi-Fiや電源を新設して「リモートワークできます」と掲げてコロナ禍でも売り上げを伸ばしている。

 もちろん、自分の店なので「ウチは珈琲を愛する人さえ来ればいい」「喫茶店で仕事するなんて許せない」というスタンスを貫いて、時代に背を向けるのも自由だ。が、世の中には何も変えないで何十年も同じように稼げるビジネスなんて、そうムシのいい話はないのも事実だ。

 ある老舗企業の社長から「伝統とは絶えず革新を続けること」だと言われて納得したことがある。現状維持に固執して何も変えられないことを「伝統」「文化」の一言で片付けるのは、日本人の悪いクセだ。

 純喫茶を愛する皆さんは、「守れ」の一辺倒ではなく、「時代に合わせて変えろ」と言ってあげることも、純喫茶を守ることになるのではないか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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