ところがこの理屈には、「将来の事業見通しが同じであれば」という前提がある。ここが、理論上、政策金利は株価に影響しないと神山氏がいうポイントだ。
中央銀行が利上げを行う基本的な理由はインフレだ。米FRBは、当初インフレを一時的と見なし楽観的だったが、徐々にインフレを懸念しはじめ、現在は強い対抗姿勢を見せている。利上げペースを早める方針であり、インフレへの対策として年内4回の利上げが見込まれている。
ところが、「企業はインフレ率と同じだけ値上げをすることで、インフレ率と同等の事業成長率が上乗せされる」(神山氏)。原材料価格の上昇を、“企業努力”として吸収しがちな日本企業と違い、特に米国では上昇分をそのまま消費者に転嫁するのが一般的だ。インフレ分を販売価格に乗せるため、売上も利益もインフレ分だけ上昇する。
インフレと利上げが連動して起こるなら、理論的には「利上げは株価にはフラットな影響」(神山氏)となるわけだ。株式はインフレに強いといわれるが、それはこうした理由による。
もっとも、株価は理論通りに動くわけではない。「おかしな理論の解釈が、米国でもそこそこ出ていて、金利が上がると実際に株が売られている。さらにそれを利用するヘッジファンドもいる」と神山氏。それでも、理論的には利上げは株価にネガティブではないので、「株価が荒れるのは長くても年の前半だろう」(神山氏)
そう見ると、今の株価は「一口で言うと下がりすぎ」だと神山氏。
経済自体の状況は悪化しておらず、好調が継続している。「日本の輸出も半導体不足などで少しへこんだが、それも戻ってきた」(神山氏)。米国の需要は堅調であり、そこに向けて日本やドイツなどの輸出も安定して伸びている。
FRBは早期の利上げを示唆しているが、2%程度のインフレ率と2%程度の政策金利が正常だというのが神山氏の認識だ。そのため、予想される利上げも「引き締めではない。キーワードは正常化だ」と話した。
利益水準に対して期待から株価が上昇した銘柄は、不確実性の上昇から売られているが、「今の経済環境で今後の経済的な期待がつぶれる可能性は非常に低いので、株価は下がりすぎ。行きすぎたグロース株の調整には少しかかるが、2〜3四半期で解決されるのではないか」とした。
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