DAZNの新戦略「DAZN JAPAN 2.0」の正体とは? NFT参入も示唆、会見から見えた“次の一手”(3/4 ページ)

» 2022年01月29日 08時00分 公開
[樋口隆充ITmedia]

値上げに関しては具体性に欠ける回答

 新戦略の概要を明らかにする一方で、この会見の最大の注目点だったであろう価格改定に関しては、具体性に欠ける回答に終始した。

 山田氏は値上げについて「これまでの5年間でかなりの投資をしてきた。今後さらなる成長のために必要だった」と正当性を主張。「値上げ報道以降のSNSの反応を見ているが、各チームが販売する年間プランがお得で、チームにも貢献できるとの声を頂いている」とし、ユーザーから一定の支持があるとの見解を示した。

photo 会見に出席した山田学エグゼクティブバイスプレジデント

 値上げの狙いについては「われわれが提供できているライブコンテンツ、オリジナルコンテンツ、テレビ局の一部番組の配信状況など総合的に勘案した結果」とだけ述べ「われわれは国内では圧倒的なコンテンツを誇っている。競合他社と比較しても、月額3000円は競争力のある価格であるとともに適正価格だ」と強調した。

 会見では3000円の算定根拠やこのタイミングでの値上げの理由などについて複数の報道各社から質問が相次いだが「非常に細かい質問が来ており、時間の都合上、ここで回答するのは難しいと判断した」とだけ説明し、終了予定時刻までの時間を残したまま、その後の質問にほとんど答えることなく、突然会見は打ち切りに。書面回答に切り替えたが、そこでも会見同様の説明を繰り返すにとどまった。

 同社は2月22日以降、月額プランを1925円から3000円に、一括払いの年間プランを1万9250円から2万7000円にそれぞれ値上げすると発表している。2プランに加え、月額2600円(年額3万1200円)月額プランと年間プランを組み合わせたプランを新たに投入する予定だ。

photo DAZNの新価格

告知方法改善の考えはなしか

 モータースポーツやテニス、アメリカンフットボールなどのスポーツの試合も配信し、DAZNがスポーツ配信の総合プラットフォームになりつつあるのに対し、同社が発表した「ライブコンテンツ視聴ランキング2021」を見ると、トップ10をサッカーコンテンツが独占している。このため、ユーザーには多くのサッカーファンがいるとみられる。

photo DAZNの「ライブコンテンツ視聴ランキング2021」(出典:DAZNの配布資料)

 サッカーファンにとっては欧州サッカー最高峰の大会「チャンピオンズリーグ」(CL)と「ヨーロッパリーグ」(EL)の放送は注目コンテンツの一つだ。同社は17年6月、18-19シーズンからの3季分の放映権を獲得。DAZNの看板コンテンツの一つとして集客を図っていたが、20年10月、ユーザーに事前通知することなく終了した。

 最終的に朝日新聞がDAZN側に問い合わせる形で、同社が同大会の放映権を失ったと明らかになったが、同社はプレスリリースなどで正式発表しておらず、ファンの間で困惑が広がった。

photo DAZNが事前に通知することなく放送を終了した欧州チャンピオンズリーグ。現在はWOWOWが独占放送中(出典:DAZNの過去のプレスリリース)

 競合のスカパーは16年12月、DAZNにJリーグの放映権を奪われた際、自サービスのユーザーに対し、プレスリリースを通じて放送終了について謝罪した。

 ITmedia ビジネスオンライン編集部は今後、コンテンツの配信終了について告知方法を改善する予定はあるかと質問したところ、DAZN側は「常にプレミアムなスポーツコンテンツを提供できるように努めている。もちろん状況により終了してしまうコンテンツもある。その都度、番組表を参照してほしい」と回答。告知方法を改善する考えはないようだ。

 今回の記者会見の中で、記者はDAZN側の姿勢に違和感を覚えている。丁寧な説明や注目コンテンツの配信を巡る通知方法の改善に向けた前向きな姿勢を感じられなかったからだ。価格改定後は、これまで以上にユーザーに対する丁寧な説明へのニーズが高まりそうだ。

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