学歴社会是正へ「入試移民」「進学実績公表」「学力特待生」厳禁、中国当局の本気度浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/5 ページ)

» 2022年02月03日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

残酷な入試避けた日本留学も人気

 地方出身の中国人が「不公平の極み」と度々不満を漏らすのが、北京と上海の有名大学が同地域からの募集枠を多く設けていることだ。今やアジアトップともいわれる北京大学、清華大学は北京出身者とそれ以外では入りやすさが違うというのが通説になっている。

 中国も断続的に教育改革を行い、最近では格差是正の取り組みも活発化している。ただ、政治家や官僚が北京に住んでいる限り、既得権益である北京、上海出身者の入試での優遇は変わらないと見られている。

清華大学と並び、今やアジアトップともいわれる北京大学。北京地域からの募集枠が多く設けられ、同地域出身者とそれ以外では入りやすさが違うというのが通説になっている

 高い能力があっても一発勝負や知識詰め込み型の中国の入試が合わない人はもちろんいるし、中国の“残酷な”大学入試を避けて海外留学を選択する中高所得者層も年々増えている。中国・瀋陽市には、日本の有名大学進学を目指す幼稚園ー高校の一貫校があり、保護者の人気を集めている。

 欧米の大学の受験資格が得られるインターナショナルスクールも大人気で、「インター」といいながら生徒の大半は金持ちの中国人という学校もある。

 かつては公平な人材登用の手段であった大学入試だが、競争が激しくなり、国が豊かになるにつれて家庭の経済環境がモノをいうようになり、少子化の原因とやり玉に挙がるようになった。大学入試を頂点にした教育のピラミッド構造にメスを入れるために、当局は21年7月、宿題、学習塾を減らす「双減政策」を発令したわけだ。

 ただ、双減政策の規制の対象は小学生、中学生が中心で、高校生については「将来的な課題」と言及されるにとどまった。大学入試が規制改革の本丸ではあるが、科挙の時代から試験で人材を登用してきた「筆記試験大国」の中国において、そこに手を付けるにはより綿密な制度設計、調整が必要だからだろう。

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