学歴社会是正へ「入試移民」「進学実績公表」「学力特待生」厳禁、中国当局の本気度浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(4/5 ページ)

» 2022年02月03日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

学歴社会をあおる行為を厳禁

 大学入試制度そのもの改革は時間がかかりそうだが、22年に入り、当局はやりやすそうな格差是正に着手した。1月28日に「2022年大学入試業務に関する通知」を公表し、「中国中西部・農村地区での学生募集に力を入れ、出稼ぎ労働者の子女にも入試の機会を確保する」と宣言するとともに、大学入試の抜け道である「大学入試移民」を厳禁したのだ。

 入試移民とは、大学入試で優遇措置の適用を受けるために子どもの戸籍(日本でいう本籍地に近い)を辺境地域に移す行為だ。

 北京、上海出身者が有利なのは前述した通りだが、教育インフラの格差を考慮してチベット自治区、新疆・ウイグル自治区などの受験生は、大学入試の合格最低点がほかの地域よりかなり低く設定されている。制度を悪用し、入試のために都市部から戸籍を移す入試移民は2000年代から社会問題化し、規制もかけられてきたが、なかなかなくならない。

 21年夏には、北京、清華大に多数の合格者を出すことで知られる中国の超進学校の校長が、息子を同校で学ばせながら、戸籍をチベット自治区に移して清華大学合格を狙っていたことが告発され、大きなニュースになった。入試移民はずるいだけでなく、辺境地域の高校生の入試機会を減らすことにもなり、「共同富裕」のスローガンを掲げる当局は見過ごしてはおけないだろう。

 同通知では大学進学実績の宣伝も禁じられた。中国では大学入試が終わると、各地で「我が市で最も高得点だったのはA高校のBさんで〇〇点」などと報じられる。清華大学の卒業生の結婚披露宴で、参列者の同級生に「入試の点数は何点ですか」とインタビューする動画も大バズりした。高校の進学実績発表だけでなく、こういった報道やコンテンツも、おそらく規制されるだろう。

 通知はさらに、「大学入試の実績で教師や生徒にインセンティブを与えることを禁止する」「地方政府や学校は進学実績の目標をつくってはいけない」「進学実績と教師の評価をひもづけてはいけない」と明記した。

参列者に入試の点数を聞いている、清華大学の卒業生の結婚披露宴動画(出典:好看視頻、海客新聞チャンネル

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