「SaaSとして過去に見たことがないスピードで成長をしている 」
P.A.I.(パーソナル人工知能)開発を行うオルツ社(東京都港区)が提供する会議議事録の自動文字起こしツール「AI GIJIROKU(AI議事録)」の売上成長を見た投資家は、製品の爆発的な拡販スピードに驚きを隠せなかった。
AI insideやPKSHA Technologyなど独自に培ったAI技術をSaaSプロダクトとして展開し、成長を遂げる企業が増えている。パーソナル人工知能の研究開発に注力してきたオルツもまたSaaSモデルのプロダクトを2021年にリリースした。
その実績は、わずか1年で"導入社数3000社"、"ARR20億円"といった通常のSaaSスタートアップとは比べ物にならない程のスピード感だ。
同社の代表を務めるのは、シリアルアントレプレナーである米倉千貴氏。米倉氏はあくまで「AI GIJIROKU」はオルツのビジョン実現に向けた1つのマイルストーンだと言う。
今回、SaaS企業分析特化型コンテンツを運営する「企業データが使えるノート」のアナリストが米倉氏に独占取材を行い、急成長の実態と今後の展望に迫った。
株式会社オルツ 代表取締役 CEO 米倉千貴。技術企画・経営企画・ディレクションを担当。2001年株式会社メディアドゥ取締役に就任。2004年に独立。2014年、株式会社未来少年を年商15億円まで成長させた後に全事業をバイアウト。2014年11月に株式会社オルツを創業。
14年に創業したオルツは、デジタルクローンをつくり出すことによって「人の非生産的労働からの解放を目指す」AIベンチャー企業である。
オルツが独自に研究開発しているのが、人間の意思や判断をデジタル上のクローンとして再現可能なAI技術「パーソナル人工知能」だ。
パーソナル人工知能は、私たちがデジタル上に残す動画や画像、音声やテキスト情報を収集・解析し、その人に成り代わって会話などを行える“個人を再現したAI”がデジタル業務を代替することを目指す。まさに「SF世界を現実とする」ような技術であるといえる。
オルツはこの壮大なビジョン達成に向け、PoC(概念実証)を含め、創業から7年間、AIの研究開発を行ってきた。その中から生まれたプロダクトが「AI GIJIROKU」だ。
代表の米倉氏は、SaaSプロダクトの製品展開はあくまで長期的なビジョンの実現に向けた戦略の一部であるという。研究してきた一部の技術をSaaSとして切り出し、プロダクトの利用により多くのユーザーの音声データを活用する狙いがある。
AIの研究開発過程で音声認識技術に課題が見つかり、改善のための研究に取り組んでいたことが製品化のきっかけとなった。SaaSプロダクト自体の開発は目的ではないものの、その拡大スピードは脅威的な伸びを見せている(オルツ社提供資料より)
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