「AI GIJIROKU」は、会議や講演などでの音声文字起こしが可能な自動議事録ツールである。
現在35か国語以上の言語に対応しており、Zoom連携を行うことで、会議やウェビナーでの会話を議事録として自動保存するだけでなく、字幕のようにリアルタイムで画面上にテキスト化し、可視化することも可能だ。
「AI GIJIROKU」の特徴は、オルツが強みとするパーソナライズ技術にある。AIが学習することで利用者個人にパーソナライズされ、文字起こしの精度が利用するほどに向上していく仕組みだ。ユーザーの話し方や言葉の選び方、文脈構成の特徴などを学びながら最適化していく(オルツ社提供資料より)従来の文字起こしツールは複数人の話者が会話を行った場合に、別の音声として識別できず、文脈が汲み取れないことから文字起こしの精度が下がる課題があった。ここに同社のAI技術を生かしたことで「93〜95%の正確性で文字起こしができており、汎用的な音声認識よりも5〜10%ほど精度が高く、ユーザー体験に大きな差を生んでいる」(米倉氏)という。
ZoomなどによるWeb会議が増える中で、会議のメモや議事録を残すニーズの増加に応えているほか、記者や個人事業主の会話ログツールとしても活用されている。
AI GIJIROKUは月額制のサブスクリプションモデルで個人や法人に対しサービスを提供している。月額1500円の個人向けプラン、月額2万9800円で10アカウントのビジネスプラン、月額20万円で100アカウントのプレミアムプランが設定されている。
導入企業数は4000社に迫る勢いでユーザーを獲得しており、ビジネスプランを中心に小数IDでの導入も増えている。
今回の取材ではプロダクトローンチ後の成長スピードが明らかになった。
20年10月のローンチから、1年後には月間のサブスクリプション収益であるMRRが1.7億円、年間ベースの収益であるARR20億円とSaaSビジネスとしては過去に類を見ないスピードでの拡大を見せている(オルツ社提供資料より)*MRR =Monthly Recurring Revenue
サブスクリプションビジネスにおける月次の定常収益
*ARR = Annual Recurring Revenue
年間の定常収益。期末におけるMRRを×12で算出する。
SaaSスタートアップでは「1年で1000万円のMRRを達成すれば順調」といわれる中で、グローバルSaaS企業と比較してもトップクラスの成長を誇っている。また、新規のユーザー獲得だけではなく、導入企業内でユーザーのID数が増えていることも急成長に寄与している。
マネジメント会議などでの利用を通じて製品への信頼を獲得し、そこから部署会議や営業の外部会議等にも展開することで、利用が広まる事例が多いという。
「KPIが示す通り、日本の法人や個人、自治体のニーズをしっかりと押さえられており、今後も拡大予定。業界別の専門用語を拾える音声認識ソリューションの反響も良く、特定業界に特化した販売も力を入れ始めている」(米倉氏)と今後の成長にも自信が伺える。
これまでの「AI GIJIROKU」の成長・拡大の背景にはパートナーセールスの徹底した活用がある。
一般的にSaaSは自社でインサイドセールスやフィールドセールス部門を構築し、直販体制でマーケティングを行うことが多く見受けられる。
一方で比較的単価も低く、サービス開始の難易度も高くない「AI GIJIROKU」においては、販売体制だけでなくサポート部門も一括してパートナーに任せることで自社リソースを投下しない形での拡大を可能としている。
徹底したパートナー戦略構築のもと、現在では売上げの8割が代理店経由となっている。
SaaS型のAIプロダクトでは、21年3月にAI inside社の特定パートナーにおける大型解約が注目を浴びた経緯もある。外部チャネルを活用するリスクについても質問を投げかけたが「ユーザーの動向を注視しているが、目立った解約などは発生しておらず継続利用するケースが大半と見ている」(米倉氏)と製品拡販の健全性を強調する。
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