デビットカードは日本のキャッシュレスの切り札になるか?金融ディスラプション(1/2 ページ)

» 2022年02月24日 08時25分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 長らく遅れていた日本のキャッシュレス化だが、政府のポイント還元などの施策、またコロナ禍によるEコマース拡大などにより、近年はかなり拡大した。といっても経済産業省の調べによると、2020年で29.8%と、まだ諸外国に対して低い水準に留まっている。

 では、どうしたらさらに普及が進むのか。昨今、日本のキャッシュレスの切り札としてVisaが力を入れているのがデビットカードだ。デビットカードとは、通常のクレジットカードと同様に店舗やECで利用できるが、支払いは後払いではなく、銀行口座から即時に引き落とされる仕組みのカード。銀行口座とひも付くため、銀行が発行する。

 このデビットカードこそが、「現金主義、安全主義の人にも選んでもらえるキャッシュレス」(ビザ・ワールドワイド・ジャパンのコンシューマーソリューションズ部長寺尾林人氏)だというのだ。

現金派をキャッシュレスに取り込む「デビットカード」

 それはなぜか。20年10月に自社でVisaのデビットカード取り扱いを始めた千葉銀行の俣木洋一氏(カード事業部長)は、「現金払いを好む方々は、すぐその場で払いたいと感じている。来月の支払いでいくら払うのか分からないことに嫌悪感のある人が多いのではないか」と話す。自身も、デビットカードを出す前は現金派で、クレジットカードは高額な買い物だけに利用していたという。

千葉銀行は「キャッシュカードでお買い物もできる」という観点で、非クレジットカードユーザーに訴求する

 こうした、後払いを敬遠するユーザーはまだまだ多く、それが最近のプリペイドカードやQRコード決済など、前払い型の急進につながっていると俣木氏は見る。こうした点から、さらにキャッシュレスを普及させるには、クレジットカードだけではダメで、現金払いに近いデビットカードが重要だというのだ。

 実際、諸外国でのデビットカード普及率は非常に高い。Visaの調査によると、19年と21年の比較で、決済金額に占めるデビットカード比率は45%から52%に上昇した。取引件数で見ると、66%がデビットカードだ。

世界でみると、決済の主流はクレジットカードではなくデビットカードに移行している(Visa)

 特に英国ではその傾向が顕著で、クレジットカードの利用が微増なのに対し、デビットカードの利用が急速に拡大した。デビットカード増加の一方で、現金決済比率は急速に縮小しており、17年にその比率は逆転している。現金の代わりとなったのが、クレジットカードではなくデビットカードだったということが一目で分かる。

英国の例では、デビットカードが現金決済を徐々に代替していったことが一目で分かる(Visa)
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