ロシアのウクライナ侵攻、日本企業が備えるべき本当の怖さ世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)

» 2022年03月10日 08時04分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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ロシアが公開した「非友好的」国家リスト

 ロシアは3月7日、同国に「非友好的」な国家・地域のリストを公開。日本も含まれていて、このリストに並んでいる国は特に注意が必要だろう。

 米FBIは、ランサムウェア攻撃に対して、次の5つの対策を取るよう民間企業などにアドバイスをしている。言うまでもないが、サイバー攻撃に国境や言語は関係ないため、日本でも同様の対策をするべきだ。

 まずOSなどのシステムとソフトウェアやアプリなどを最新状態にしておくこと。アンチウイルスソフトといったソリューションを導入して、自動アップデートをオンにし定期的にスキャンを行う。データをバックアップして、そのデータをネットワークから隔離すること。企業や団体がランサムウェアに感染した際の対策シミュレーションをしておくこと。

 特に、これまでの日本の大手企業へのサイバー攻撃のように、規模が小さくセキュリティ予算も比較的少ない子会社や関連会社、さらに海外の工場や営業拠点などが狙われる可能性もある。米国で21年にランサムウェア攻撃の被害を受けた企業のうち、4分の3は中小企業だ。日本でも同様に、中小企業は特に気を引き締めたほうがいいだろう。

 日本企業を次々とランサムウェア攻撃することで、経済を混乱せたり、企業の信用に傷をつけたり、知財の情報を公開して力を削いだりしていくこともできる。サイバー攻撃はそういう意味でも、国家にとって攻撃ツールとなりうるのだ。

企業は今すぐできる備えを(画像はイメージ)

 ボストンのサイバーセキュリティ企業であるibossのポール・マティーニCEOは、ロシアからのサイバー攻撃について「時限爆弾がカチカチ動いている状態」(米USAトゥデー)であると述べている。

 この時限爆弾はいつ爆発するのか。プーチンを取り巻く状況が悪化し、さらに孤立が深まれば、カウントダウンが早まる可能性がある。

 筆者は何も、闇雲に不安を広げようとする意図はない。だがこの混乱時には、「備えあれば憂なし」という気持ちでセキュリティ対策を再確認したほうがいいかもしれない。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。

Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル


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