では、なぜ日本でこれほどiPhone SEが人気なのだろうか。
まず単純に、iPhone SEは他のiPhoneよりも安い。こちらの記事(「iPhoneの価格は右肩上がり? 3GからXS Maxまで歴代機の定価をまとめてみた」)にもあるように、年々、iPhoneが高額化してきた中にあって、手頃な価格を実現しているのがiPhone SEの最大の魅力だ。
日本市場でもアップルストアでSIMフリーモデルの販売を開始した「iPhone 5s」から、iPhoneの一括価格を調べてみた。iPhone 5sからiPhone 8までは7万円から8万円台をキープしていたが、17年に登場した「iPhone X」、その翌年に出た「iPhone XS」では、最小ストレージ容量でも10万円超えになった。ただ、あまりに価格が高騰すると幅広いユーザー層を取り込めなくなると考えたのか、「iPhone 11」シリーズからは「Pro」モデルを新設し、ノーマルモデルは以前の価格帯に戻そうという意図が感じられる。
「Pro」の下に「ノーマル」「mini」があっても、iPhone SEはさらに安い。安いが、チップセットはその時点で最新のものを搭載し、パフォーマンスを最新モデル並みに高めているため、慣れ親しんだ使い勝手のまま快適に使い続けることができる。非常にコストパフォーマンスが高いiPhoneなのだ。
安いiPhone SEがこれだけ人気になったのは、最新端末で大幅な割引ができなくなってきたという背景もある。19年10月に施行された改正電気通信事業法により、回線と端末をセットで販売したときの割引は、最大で税込み2万2000円までになってしまった。
端末は割賦で購入するユーザーが多く、各キャリアの購入補助プログラムを利用することで月々の負担は抑えられている。しかし、以前のように最新のiPhoneを実質負担0円で買うことはできなくなった(それでも最近は、回線契約を伴わず端末だけ購入する場合も割引する“店舗独自の割引”を適用することで、型落ちの「iPhone 12」などで大幅割引を実施しているショップもある)。店頭の実質負担額を見て、安いモデルにしておこうと判断するのは自然なことだ。
安いとはいえスペック的には劣るiPhone SEがここまで支持されるのは、フラッグシップモデルに大きな進化が見られないことも要因としてありそうだ。
iPhone SEの液晶ディスプレイはiPhone 8と同等で、今見ても十分美しいディスプレイだ。また、iPhone SEの単眼カメラで撮った写真が、他のハイスペックモデルと比べてひどく劣っているかというと、そういった印象もない。スペックにこだわりがなければ十分満足できる。カメラにそこまでこだわりがないなら、体感的に最新モデルとほとんど差がないiPhone SEで十分と考える人は多いだろう。
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