もっと残業したい、もっと働きたいと感じている従業員がこれだけ多く存在しているということは、働き方改革だコロナ禍だという以前に基本給がギリギリまで低く抑えられているからだ。では、なぜそんな待遇になってしまうのかというと、突き詰めていけば、それが日本企業のビジネスモデルだからだ。
「低賃金+長時間労働」で人件費を抑えることで、雇用と経営を安定させるというスタイルで日本企業は成長してきた動かし難い事実がある。そのあたりの構造的な問題は、独立行政法人 労働政策研究・研修機構 高橋康二 主任研究員がNHKのWEB特集で、端的にお話をされているので引用させていただこう。
『日本の企業はもともと終身雇用で、欧米などと比べて、雇用の確保を優先してきた。失業率は低い水準にある一方で、基本給を抑え、景気の変動には残業などの増減で調整してきた。労働者は、好景気の時には残業による長時間労働で生活が維持できたが、不況になると一気に生活が悪化する』(残業代が消えて....低所得化する“中流” 21年12月17日)
このような話を聞くと、「じゃあしょうがないか」と納得する方も多いことだろう。誰だって長時間労働を前提としたような働き方などしたくない。本音を言えば、残業しないでも生活ができるような給料が欲しいのは当然だ。が、それを望んで会社が潰れて失業してしまったら元も子もない。
結局、雇われている身としては、景気がよくなって会社が給料をあげてくれるまでこっそりと副業をするなどしてじっと耐えるしかない。そのようにあきらめてしまうことだろう。
気持ちは痛いほど分かるが、そのように「雇用の確保」を持ち出されると、「じゃあしょうがないか」とすべてが許されてしまうカルチャーが、日本経済をここまで低迷させてきた側面もある。
いま、先進国の多くが賃上げするなかで、日本だけが30年間賃金が上がっておらず、ついには隣の韓国まで追い抜かされた「安いニッポン」という問題が深刻化しているが、それも突き詰めていけば「会社が潰れないためには、従業員もぜいたく言わずに我慢しなくちゃね」という社会の同調圧力が“主犯”である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング