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経営会議で毎月の決算報告をしているが、経営チームの反応が薄い……何が足りない?経営を動かすファイナンス(2/3 ページ)

» 2022年03月24日 10時30分 公開
[鷲巣大輔ITmedia]

月次の経営会議における、FP&Aレポートの一例

 先述したように、「『To Be』と『As Is』のギャップを明確にし、そのギャップをどのように埋めるのか」は、経営会議においてFP&Aが議論をリードしていくポイントになります。私は経営会議での議論用の資料として、下記のようなページ1枚の資料を準備しています。もちろんこれ以外にもインプットのモニタリングを目的とした非財務KPIのモニタリング資料や、随時テーマに沿った分析報告や提案、稟議等を準備しますが、毎月ルーティンとして準備している、ある種の「キラー資料」がこちらです。

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 この資料では、下記の要素を1ページ内にまとめています。

  • 当初立てた年間予算(売上、利益、キャッシュフローなど)は何か?(= To Beの再確認)
  • ここまでの実績(Year to Date)はどのくらいで、予算に対してどれだけの乖離があるか?そしてその乖離はどうして生まれたのか?(=As Isの報告)
  • これまでの実績を踏まえると、その延長線上にある今期の着地見込みはどのくらいか?予算との乖離はどのくらいか?(これもAs Isの一種。将来の見込みを含めたForecast)
  • 予算との乖離を埋めるためにとることのできる施策は何か?その実現可能性はどのくらいか?また予測値には含まれていないが、業績を上下させる要因があるとしたら何か?(=機会とリスク)

 この資料は報告用ではなく、あくまでも「議論のための材料」であることを強調したいと思います。つまり経営会議の時間をもらって、特に最後の「機会とリスク」のパートで下記のトピックについて経営チームと議論をします。

  • 目標(=予算)達成のためにどの施策を選択するのか
  • その施策を行動に移すために必要な経営資源をどのように確保するのか
  • その施策をとった場合に想定される副作用はどのようなものか
  • 負の効果をどのようにして抑え込むのか

 もちろん議論が活性化し、経営会議の参加メンバーが積極的に発言を始めれば、当初自分が想定していたこと以外の施策やアクションが上がってくることも珍しくありません。むしろそういう状況のほうが本来の意図通りの、望ましい形です。

 データや財務モデルに基づき、それらの想定外の施策やアクションの定量的評価、想定されるリスク要因などを冷静にかつ即座にレスポンスできる機敏さを持っておくと、より高品質の議論を支えることができるようになります。

 そしていったん、組織として取るべき選択肢が決定したら、その決定に従った売上見込み、費用見込みを反映させて収益予測を作り直します。そして翌月以降は、作り直した収益予測とも比較しながら計画の進捗を確認する……これを繰り返していくのが、私が考える経営会議のルーティンです。

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