まず直面したのが「湯戻し問題」だ。同社は、通常のカップヌードルの湯戻しについて「ポットの保温湯(95℃以下設定)では、麺がうまく湯戻りしません」(公式Webサイトより)と発表している。つまり、おいしく食べるには96度以上での湯戻しが必要になる。
しかし、ISS(国際宇宙ステーション)内での給湯可能なお湯の温度は70〜80度。必要な温度に達していない。そこで、麺の小麦粉やでんぷんの配合を工夫し、低めの温度での湯戻しに対応できるようにした。
湯戻しに成功。「よーし! 食べるぞ!」となったところで次の問題も忘れてはいけない。無重力空間では、液体が球体になってフワフワと飛んでいってしまうのだ。
そこで同社は湯戻し後も形状を保持する一口大の塊麺を採用。麺を卵白でコーティングすることで、一本一本の麺が飛び散らないような工夫も施した。スープやソースも飛び散りを防ぐために粘度も高めるなど、おいしく食べられるように細部にまでこだわった。
多くの宇宙食を開発してきた同社に宇宙食に向かない食品を聞いてみた。
「当社の宇宙日本食は水を加えるタイプのものですが、他にもレトルトパウチタイプやそのまま喫食できるタイプのものもあります。いずれも、長期保存が可能という観点を含め、JAXAから宇宙日本食として認証を受けました。長期保存が難しい食品は不向きだと思います」(日清食品HD 担当者)。
21年8月、日清食品のカップヌードルブランドが発売50年目にして世界累計販売500億食を突破した。現在は世界100カ国で販売されているという。世界中に多くのファンを持つカップヌードル、宇宙でも他国の飛行士をとりこにしているのかもしれない。
「こんなにも英知が詰まった宇宙食をぜひ食べてみたい! レトルト大好き! K記者として試食しなければいけない」と思い、購入を申し出たが、一般販売はしていないとのことだった。しかし、日清食品HDの担当者によると、地球上で食べるカップヌードルと、宇宙で食べるカップヌードルの食感に大きな違いはないという。
人類が夏休みにフラリと宇宙旅行に行けるようになるにはまだ時間がかかるだろう。それまでは、宇宙食と同じ食感が楽しめるカップヌードルを食べながら気長に待つとしよう。
(画像提供:日清食品HD)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング