今年、2022年。日本の鉄道は開業150周年を迎える。明治維新の直後に生まれた産業だから長い歴史がある。それゆえに「保守的な考え方」に支配されやすい。
鉄道事業の会社名には「○○鉄道」と入れるべきだし、漢字のほうが格調高い。いや、漢字が当然でひらがななど軟弱だ。カタカナなんてとんでもない。ましてやローマ字を正社名にするなんて。
そんな保守的な考え方を、第三セクター鉄道会社はことごとくぶち壊してきた。「道南いさりび鉄道」「IGRいわて銀河鉄道」「えちごトキめき鉄道」「肥薩おれんじ鉄道」などなど。
私はどちらかというと「保守陣営」だから、名前が決まるたびに眉をひそめ、老婆心ながら「不祥事を起こしたときに不謹慎な会社名ではないか」と苦言を呈した。
■こんなときに困るはず! 鉄道路線のキラキラネーム(12年7月13日、本サイト内の筆者連載「杉山淳一の時事日想」)
しかし、時が経てば定着する。違和感が消える。私は情けないことに馴染んでしまった。保守的である一方で迎合しやすい性格かもしれない。「逆らっても異議を唱えても変わらない事象」は受け入れてしまう。これは信念に対する裏切りだ。いや、処世術だ。そのほうが穏やかに生きていける。いまでは地域性があって好ましいとさえ思う。
「福井県並行在来線準備株式会社」は7月から「株式会社ハピラインふくい」になる(出典:福井県並行在来線準備株式会社、社名募集ページ)
- 次の「新幹線」はどこか 計画をまとめると“本命”が見えてきた?
西九州新幹線開業、北陸新幹線敦賀延伸の開業時期が近づいている。そこで今回は、新幹線基本計画路線の現在の動きをまとめてみた。新幹線の構想は各県にあるが、計画は「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」として告示されている。これと費用便益比、各地のロビー活動の現状などから、今後を占ってみたい。
- ドラえもんがつくった地下鉄は公共交通か? ローカル線問題を考える
『ドラえもん』に「地下鉄を作っちゃえ」という話がある。のび太がパパのためにつくった地下鉄は公共交通と認められるか。この話をもとに、公共交通になるための過程、利用者減少から撤退への道のりを考えてみたい。
- 赤字ローカル線存廃問題 「輸送密度」だけで足切りするな
地方ローカル線は、従前からの過疎化と少子化に加えて、疫病感染対策の長期化で危機的状況にある。特に輸送密度2000人未満の線区が課題とされるが、そもそも民間企業が赤字事業から撤退できないという枠組みがおかしい。公共交通は応益主義であるべきだ。そこで存廃問題で使われる「輸送密度」について考える。
- なぜ「時速5キロの乗り物」をつくったのか 動かしてみて、分かってきたこと
時速5キロで走行する乗り物「iino(イイノ)」をご存じだろうか。関西電力100%子会社の「ゲキダンイイノ」が開発したところ、全国各地を「のろのろ」と動いているのだ。2月、神戸市の三宮で実証実験を行ったところ、どんなことが分かってきたのだろうか。
- 新幹線だけじゃない! JR東海の「在来線」はどうなってるのか
JR東海といえば「東海道新幹線を運行する会社」「リニア中央新幹線を建設する会社」というイメージが強い。報道も新幹線絡みが多い。しかしほかのJR旅客会社と同様に在来線も運行している。そして「新幹線ばかり優遇して、在来線の取り組みは弱い」という声もある。本当だろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.