並行在来線会社名「ハピラインふくい」 未来に“福”はやって来るのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(7/8 ページ)

» 2022年04月02日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

観光列車に期待

 ハピラインは、放置すれば純減していく利用者を維持したい。2000人/日規模の利用増進策が必要となる。増便もその施策のひとつ。「福井県並行在来線経営計画」はほかに、イベントに合わせた臨時便の運行に対応するほか、新幹線との接続を考慮しつつ、列車が毎時一定の時刻に発車するパターンダイヤを採用する。

 さらに福井〜金沢間でIRいしかわ鉄道と直通する相互乗り入れ列車を設定し、快速列車も検討する。JR越美北線は北陸線の分岐点が越前花堂になっており、福井〜越前花堂間は北陸線に直通する。この乗り入れも維持する。

 そして最後に挙がる項目が「観光列車」だ。「福井県独自の特色ある観光列車を導入し、営業区間内だけではなく、JR小浜線や越美北線へ乗り入れ運行も実施したい」と付されていた。これがどのような形になるか、県外の旅行者や鉄道ファンからも注目だ。

 北陸新幹線の並行在来線は観光列車が多い。しなの鉄道「ろくもん」、えちごトキめき鉄道「えちごトキめきリゾート雪月花」「国鉄型観光急行455 413」、あいの風とやま鉄道「一万三千尺物語」。どれも食事メニューを用意した列車だ。IRいしかわ鉄道はJR西日本と「花嫁のれん」を運行する。その先にはのと鉄道の「のと里山里海号」がある。視野を広げると、北越急行線には観光車両「ゆめぞら」がある。西側の小浜線は不定期ながら京都丹後鉄道の観光列車が乗り入れる。

 北陸地方は観光列車銀座ともいえる地域だ。間に挟まれたハピラインもここに参入し、日本海縦貫観光列車乗継ぎルートに参加してほしい。ところが残念ながら車窓に特徴はない。路線は内陸平野部で海が見えないし、そもそもトンネルが多い。むしろトンネルが魅力だ。約14キロメートルの北陸トンネルは日本の鉄道史に残る偉業でもある。

 「ゆめぞら」のように車内映像システムを入れてもいいし、車両側からレーザープロジェクターでトンネルの壁に照射すれば世界中の車窓を再現できそうだ。トンネルだからできる観光もある。沿線の旧北陸本線トンネル群も国の登録有形文化材で観光要素がある。むしろ車窓ではなく「食」に割り切った列車でもいい。

 北陸新幹線の金沢〜敦賀間開業によって、IRいしかわ鉄道も石川県内の並行在来線を引き受ける。あらたに約46キロメートルを引き受け、約64キロメートルの路線になる。ハピライン福井とIR石川鉄道の連携は当然だし、ゆくゆくは敦賀から直江津、さらに越後湯沢、妙高高原へ。もうひとつがんばって軽井沢へ。縦貫できる長距離観光列車ができたら素晴しい。そのくらいの距離があれば夜行列車も再現できそうだ。

 「福井県並行在来線経営計画」によると、想定する運行計画を実現するためには予備を含めて16編成(2両×16本)が必要となり、JR西日本から521系電車15編成(2両×15本)を譲受する。福井県内の並行在来線はほぼ交流電化となっているけれども、敦賀駅構内だけが直流電化区間だ。ここだけのために両方の電化区間に対応した割高な車両を用意しなくてはいけない。

 残り1編成は開業後に新古車として譲受する予定だ。これが観光列車向けになるだろうか。非電化の越美北線に乗り入れるためにはディーゼルカーが必要だ。えちごトキめき鉄道は発足時の初期予算で「えちごトキめきリゾート雪月花」を新製している。新製でも改造でも、「ハピライン」イメージの具現化に期待したい。

日本海沿岸路線は観光列車の宝庫。「食の魅力」も大きい(地理院地図を筆者が加工)

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