ちょっと前までブームだったのに、なぜ「高級食パン」への風当たりは強いのかスピン経済の歩き方(2/7 ページ)

» 2022年04月05日 09時51分 公開
[窪田順生ITmedia]

「変な名前のパン屋」が悪目立ち

 近年の高級食パンブームでは、「考えた人すごいわ」(東京都清瀬市ほか)、「生とサザンと完熟ボディ」(神奈川県茅ケ崎市)、「夜にパオーン」(静岡県袋井市)など、個性的な名の店も注目を集めた。皆さんも市街地や国道沿いに突如現れた、謎の言葉が看板に大きく掲げられた高級食パン専門店を見かけたことがあるのではないか。

 ちなみに、これはパン屋の開業支援をされているベーカリープロデューサー、岸本拓也氏の“仕掛け”である。岸本氏が代表を務めるジャパンベーカリーマーケティング社の公式Twitterによれば、「日本各地・ アジア・オセアニアに350店舗以上のパン屋さんをプロデュース」しているという。

 さて、このような「変な名前のパン屋」の良いところは、やはり目立つことで、SNSやクチコミでも大きな話題となり宣伝費がいらないことだ。が、それは閉店した場合も目立ちやすいということだ。注目を集めていただけに落差も大きく、「目立ったことで行列とかもできていたけど、潰れたってことは食パン自体は大したことなかったってことだよな」という“看板倒れイメージ”が広がってしまうリスクもある。

 デイリー新潮の『ふわふわで甘い「高級食パン」ブームに翳り 半年と持たず閉店する店舗も』(1月24日)によれば、これらの「変な名前のパン屋」は21年だけでも15店を超える店舗が閉店しており、うち9店は開業から1年と経たずに店を閉めているという。

(画像はイメージ)

 これだけ閉店が目立つようになってくると、「やっぱりね」「売れてないんだな」というネガな反応も増えていく。22年1月初旬に投稿された「変な名前の高級食パン店がバタバタ潰れていて気持ちがホッコリしています」というツイートも大きな話題になった。

 つまり、「変な名前」によって得ることができた話題性や「面白い!」という好意的なクチコミという好循環が、ブームが下火になったことでそのまま「逆回転」しているのだ。

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