WhoscallがうまれたのはゴーゴールックCEOのジェフ・クオ氏が学生の頃に受けた、ある1本の電話がきっかけだった。
香港の競馬協会を名乗る人物から、「競馬で高額賞金が当たった。ついては賞金を受け取るために税金を納めてください」という。ただ、クオ氏自身は競馬の経験はない。不審に思いインターネットで調べると、複数人が同様の電話を受けて詐欺被害に遭っていることが分かった。
「この経験をきっかけに、悪用された電話番号のデータを集めて広く公開すれば、世の中から同様の詐欺被害を減らせると考えました」とジェフ・クオ氏は話す。
こうしてWhoscallは2010年にリリースされた。評判は瞬く間に広がり、13年に韓国IT大手ネイバーから出資を受けたほか、「Google Play」や「App Store」でベストアプリ賞を受賞。20年には、台湾の経済部(日本の経済産業省に相当)が創設した「総統イノベーション賞」も受賞した。
アプリのダウンロード数が順調に拡大していく中で、利用者からの支持を一層強くしたのが、台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タン氏との連携だった。
新型コロナウイルスの流行が始まった当初、台湾では全住民にマスクが行き渡るよう、タン氏が先頭となり、マスクの実名販売システムを構築。この時、クオ氏は「人々のマスク欲しさにつけこんで詐欺が多発するに違いない」と思ったという。
クオ氏は、マスクの実名販売システムが始動する前に、Whoscallの利用者らにスマホ画面でポップアップを表示して詐欺の注意喚起を実施した。
それでもマスクの実名販売システムがスタートすると、詐欺の報告件数が急増した。詐欺集団は海外から被害者に電話をかけ、「購入手続きの設定に間違いがあった」「健康保険証が無効になっている」などとかたり、折返しの電話を求めて高額の通信量をだまし取る事例があったという。
ゴーゴールックは台湾のコロナ対応指揮センターと連携し「政府のマスクシステムから電話を差し上げることはありません」と声明を発表。さらに、タン氏に対しても「政府から住民へ連絡を行う際は固定電話に限定した方がいい」と助言。Whoscallのデータベースに政府の固定電話番号を登録し、不審な番号ではないことが一目で分かるようにしたという。
タン氏はこれらの動きについて「Whoscallが詐欺やフェイクニュースの防止に政府と協力してくれて感謝している」と述べている。
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