コロナ禍で飲食店への客足が遠のく中、焼肉店は他の飲食業より強力な換気扇による三密回避、一人焼肉のヒットなどの要因から20年度の倒産はこの10年間で最も少ない12件でとどまっていた。しかし長引くコロナ禍で飲食業界の厳しさが増す中、大手居酒屋チェーンが焼肉屋に業態変更するなど、焼肉人気を当て込んだ新規参入が目立ち、風向きが変わっている。
居酒屋大手のワタミは、「居酒屋ワタミ」から「焼肉の和民」に業態を変更し、ラーメンチェーンの「幸楽苑ホールディングス」も「焼肉ライク」を出店した。
また長引くコロナ禍によってデリバリーや持ち帰りが定着し、焼肉店以外との競争も激化している。日本フードサービス協会によると、21年の焼肉店の売上高は前年比9.2%減と苦戦し、19年と比べると売上高は約2割(22.5%減)も落ち込んだ。
この10年間における焼肉店の倒産は落ち着いており、最も倒産件数が多いのは11年の食中毒事件が影響し、全国的に業界が冷え込んだ時期にあたる12年の33件だった。その後、業界は衛生面の改善に注力して、倒産は減少基調で増減を繰り返していた。だが、現在は度重なる緊急事態宣言も相まって、その先行きは不透明になっている。
東京商工リサーチは「焼肉店は他業態から大手の参入が相次ぎ競争が激化していること、生活様式の変化でデリバリーや持ち帰りなどによる宅食が定着していることに加え、今後はガス料金や仕入食材の高騰が収益を圧迫することが懸念される。焼肉店は他の飲食業界よりひと足早く、収益や店舗の取り組みを問われている」とコメントした。
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