“値上げの春”に逆張り ワタミが「焼肉の和民」で仕掛けた「薄利多売」戦略下げた客単価を客数でカバー(2/4 ページ)

» 2022年04月13日 07時00分 公開
[武田信晃ITmedia]

スタグフレーション下では値下げが最大の還元

 渡邉会長兼社長は、429円の根拠について「利益を考える上で、これ以上は値段を下げられないギリギリの価格と理解してもらいたい」という。人々は値下げを求める一方で、いいモノにはお金を払うという2極化した傾向も出ている。その傾向を踏まえれば高く売る戦略も考えられる。

 これに対して渡邉会長兼社長は「現在は『悪いインフレ』になりつつある。当社は大勢の方々と歩んでいきたいと思っているので、(編注:物価が上昇しているのに、経済が停滞し、国民所得も増えない)スタグフレーション下では、値下げがお客さまへの一番の還元と考えた」と値下げの理由を話した。

 主なメニューの価格改定は、「角切りハラミ」605円→429円、「和民の特製盛岡冷麺」759円→429円などにする。1番人気だという429円で提供していた「ワタミカルビ」は、価格は据え置きで従来の75グラムから90グラムに増量することによって実質的に値下げした。

ワタミカルビ
和民の特製盛岡冷麺

 個別の業態の客足をみると、郊外型の焼き肉店「かみむら牧場」の客数は2019年比でみると200%を超える月が多い。一方、駅前の立地を中心に展開している焼肉の和民では50〜100%台で推移している。さらに居酒屋事業では50%を割り込む月も少なくない。

 渡邉会長兼社長は「かみむら牧場は(顧客が)家族が中心で好調だ。駅前にある焼肉の和民はホワイトカラーの方々などに利用されるが、今はコミュニケーションをする場としては使われていない部分もある。実際のところは週末に家族のお客さまは来ているものの、平日が厳しい」と分析する。

 そして「特に午後8時または午後9時以降の客足が全く戻ってきていない状況だ。このままでは、コロナ後も客の7割が戻るという数字にすら達しない」と危機感を示した。

角切りハラミ

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