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倒産危機の新興家電シロカ、買い取りから2年で売上高71億円の新社長の手腕家電メーカー進化論(4/9 ページ)

» 2022年04月15日 07時00分 公開

製品開発・生産体制をゼロから見直すことに

 前職では、扇風機や加湿器、ヒーターなどの日本向けを含む海外向け製品の販売と品質管理、そして新商品の企画などを担当していた金井氏。

 前職で製造していた扇風機が、日本の扇風機市場で最大40%を占めていたこともあり、日本の家電市場には関心があったという。また日本のメーカーを応援する気持ちが強かったのもシロカを買い取った理由の1つだった。そしてシロカに入り体制を見直していく。

 「まずは、商品仕入れのコスト管理や販管費などの財務面と、そしてものづくりにおける完成度の高め方や、会社をあげてものづくりを行う姿勢などを見直していきました。

 もともと現場が好きでものづくりが好きなこともありますが、やはり経営を見る上ではしっかり現場に入り込まないと問題も見つかりませんし、動かせないと考えました」(金井氏)

 実は当時の会社の状況は、社員もはっきりとは分かっていなかったそうだ。開発を担当する小川大助氏は、会社の先行きがまだ見えない時に、初めて金井氏に会ったという。

 「シロカの全商品をずらっと並べて、それぞれの課題についてやり取りしたのですが、技術にものすごく詳しくて。一体誰だろうと思ったのが最初でした」(小川氏)

 3〜4時間かけて売れ筋商品を分解し、事細かに全部見ていく。前職での開発のノウハウがある金井氏だから分かることや変えられることも多く、ここで課題がいくつも見つかった。

 さらにこのディスカッションを経たことで、金井氏が社長に就任した時には、すでに開発メンバーから絶大な信頼を得ていたという。

 「技術・開発に付いて理解が深い方が社長に就任するということで、これから会社はいい方向に変わっていくんじゃないかと感じました」(小川氏)

 そして会社の立て直しが始まっていく。シロカは10年以降ずっと右肩上がりで成長を続けてきたため、販売管理費を中心にコスト高の体質になっていた。そこでまずは、明細1枚単位で費用を確認して、本当に必要かを精査し、無駄を省いていった。

 「成長のためには、金型など投資しなければいけないことがたくさんあります。さらに今は、為替や物流、原材料費といったコストが厳しいところに来ています。

 とはいえ、人件費を削ったりしたくありません。品質の高い商品を適正な価格で世の中に出すためには、無駄遣いをしない方が良いという考えが根本にあります。それこそ、結果的に人件費以外は全部削ったのではないでしょうか」(金井氏)

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