ただ、一方でネットやSNSでは「なんでこんなちゃんとした人が」というような疑問の声も上がっている。実はこの役員、世界180カ国でジェンダー平等キャンペーンを展開するような某外資系グローバル企業に新卒入社して長くお勤めをしており、これまで立派な業績もあげてきた人である。
当然、ジェンダーやコンプライアンスでさまざまな研修を受けているはずだし、外資系ならば人前で話す際にプレゼンテーショントレーニングなども受けているはずだ。
そんな知識も意識も十分にかね備えている人が、自社のマーケティングを「覚醒剤」に例えるなんて愚かなことをするわけがない。そこで何かしらの理由で、「正常な判断力」を失っていたのではないかと推測する人もいるのだ。中には「それこそ自分がクスリをやっていたのでは?」なんて嫌味を言う人もいる。
いろいろなご意見や見解があるだろうが、筆者はこの人があんな暴言を吐いたのは「マーケティング」にのめり込みすぎた結果の弊害ではないかと思っている。この役員は18年に吉野家に転職をしてから、マーケティング改革を手がけて、業績に大きく貢献したこともあって、業界では「敏腕マーケター」として知られている。
ご存じの方も多いだろうが、マーケティングの世界では当たり前のように「顧客を囲い込む」という言い方をする。一度、客になったら逃げられないようにつなぎ止めておくということだが、最近はそんな生ぬるいことを言っていたらダメで、顧客を「自社の製品・サービスがなければ生きていけない」ところまで「依存」させることが成功のカギという考えが広まっている。
筆者も仕事柄、外資系企業のマーケターなどとお話をする機会が多いのだが、そこでは当たり前のように、顧客を自社に身も心も依存させられるかという戦略が語られる。「ファン化」というおとなしい言い方をする人もいれば、「熱心な信者にしたい」ということを公言する人もいる。
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