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地元に帰り「女性の仕事の少なさに驚いた」──それでも仕事を諦めない人のための“養成スクール”が誕生した背景福島県郡山市発(4/5 ページ)

» 2022年05月03日 07時00分 公開
[渡辺まりかITmedia]

学んだところで、県内に仕事はあるの?

 しかし、県内にIT企業がそもそも少ない環境で、卒業生たちに振り分けられるほどの仕事量があるのだろうか。

 鈴木さんが経験したように、地方では身に付けたITスキルを活用できる職種の求人が少ない。実際はあるのかもしれないが、女性に責任のある仕事を任せること自体が少なく、アシスタント的な役割が社内で期待されているケースが多い。

 また、「未経験者は採用しづらい」という経営者目線の考えもあることだろう。

 こうなってくると、まさに「卵が先か鶏が先か」問題だ。どこかで打開策を講じねばならない。

 「未経験者を経験者にすべく育てる場がないと、いつまでもこの悪循環は断ち切れない。卵も鶏もどちらも同じタイミングで必要なのです」と臼井さんは説明する。

 さらに臼井さんは「非IT企業でも、本当はIT人材を必要としている」と話す。「求人がないのは、自分たちの抱える本当のニーズを理解していないから。抱えている課題の解決策を深掘りしていくとWebにたどり着く場合が多いです。それに気付けないから、郡山のような商業都市でもIT人材の需要が生まれていないだけ」と続ける。

 「課題の本質を見きわめられる企業が増えれば、Web人材の需要が高まるはず。当社でももちろん必要となるでしょうし、(ハタフルの)取引先企業にあっせんしたり、受け入れてもらうよう働きかけたりすることも構想としてあります。

 徐々に、しかも確実にWeb人材を受け入れる企業が増えていくはずなので、その需要を満たせる人材を輩出できるハタフルアカデミーが果たす役割は大きいと考えています」(臼井さん)

 また、卒業の際にも、デジタルハリウッド大学と提携していることが優位に働く。業界内に強力なネットワークを持つ同大学から、福島県内でも対応できる関東圏の求人を紹介してもらうことも可能だからだ。

 「もっとも、当社だけでもここ3年で県内外の企業100社以上から引き合いがありました。しかも、当社の場合、事業拡大に伴い採用活動をしていった結果、スタッフの7割を女性が占めるようになった。

 そう考えると、地方だから、女性だからとやりたい仕事を諦める必要はまったくなく、どんどん可能性を広げていってもらえるのではないかと考えています」(臼井さん)

 コミュニティーマネージャーとして説明会なども担当している鈴木さんは、環境のせいにして諦めない女性たちについて言及する。「現状を打破して自分を変えられたら、未来を変えられたらという気持ちで説明会に参加している女性が多いです。前進したいという強い想いに触れるたびに地方の女性は強いなぁと感じるし、私自身も勇気をもらえます」

 「あくまでも、私の経験ベースではあるのですが、せっかく戻ってきてもWebの仕事がない、責任ある仕事がない。ようやく見つけても経験者しか採用しないと言われ、揚げ句、社会から切り離されると自己肯定感がどんどん低くなってしまいます。

 ハタフルアカデミーは、それに押しつぶされることなく、やりたいことを諦めない地方の女性たちが、チャレンジするための背中を押す役割を果たします」(鈴木さん)

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