重要ポストなのに、後継者がいない──管理職“候補”不足の企業が始めるべき「サクセッションプラン」とは連載「情報戦を制す人事」(4/4 ページ)

» 2022年05月13日 07時00分 公開
[奈良和正ITmedia]
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サクセッションプランの問題点

 サクセッションプランには問題点もあります。それは、将来に必要な人材の予測を過大に外した場合や教育した人材が転職した場合に投資が無駄になる可能性があることです。

 例えば、5年後に必要だと想定して複数の従業員に高いコストをかけて育成したものの、事業環境の変化により不要になった場合や、重要ポストにおいて高いコストをかけてReady Nowになった人材が他社に転職してしまった、という場合などが該当します。

 そのため、サクセッションプランの持ち合わせる問題点を少なくするために、自社の状態に合わせて、教育コストの無駄を減らす工夫にも一考の余地があります。

  • 管理するポストを限定する(外部採用が難しい、自然な育成では充足できないなど)
  • 育成に大きなコストをかけすぎない
  • 育成するスキルを部署特有なものから会社で共通なスキルに変更する

 しかし、これらの工夫も過度にやりすぎると、本来のサクセッションプランの意味が損なわれますので、慎重に検討する必要があるでしょう。

まとめ

 サクセッションプランは、戦略人事で取り組む施策の中でも「問題の特定と解決の両面を兼ね備えている」「施策の効果が出るのが早くて分かりやすい」という点で経営層や現場部門長などの、施策の重要関係者の理解と協力を得られやすい施策とも言えます。

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photo 他の戦略人事施策との比較

 当然、サクセッションプランを実行したとしても、「計画して人を育てる」ことの難しさは存在しますし、それを補完するため、近年「従業員のキャリア自律」による成長の促進も重要視されています。しかし、必要なポストに対して何も対策をとらないということは、企業の戦略実行が人材面に関して大きく「運任せ」になっている状態ともいえます。そのため、戦略人事で悩まれたり、タレントマネジメントで何から手を打っていいか分からないという企業では、サクセッションプランに取り組まれてみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

奈良和正 株式会社Works Human Intelligence WHI総研

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2016年にWorks Human Intelligenceの前身であるワークスアプリケーションズ入社後、首都圏を中心に業種業界を問わず100以上の大手企業の人事システム提案を行う。

現在は、タレントマネジメント、戦略人事における業務実態の分析・ノウハウ提供に従事している。

株式会社Works Human Intelligence

大手法人向け統合人事システム「COMPANY」の開発・販売・サポートの他、HR 関連サービスの提供を行う。COMPANYは、人事管理、給与計算、勤怠管理、タレントマネジメント等人事にまつわる業務領域を広くカバー。約1200法人グループへの導入実績を持つ。

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