喫茶室ルノアールは、関東を中心に77店舗を構える喫茶チェーン。主に30代後半〜50代のビジネスパーソンをメインターゲットとし、店内は「大正ロマン」と「昭和モダン」といった落ち着いた内装が特徴だ。ホットコーヒーは平均で673円と、他社のカフェチェーンに比べ比較的高めの価格設定となっている。
店内をのぞいてみると、ゆっくり仕事や勉強に励む客から、友人との会話を楽しむ姿まであり、利用方法は多様だ。「都会のオアシス」をうたい、長時間くつろげる点は同店ならではの姿だろう。最近では有料のワーキングスペース「ビジネスブース」を設置する店舗もある。
ただ以前は、“おじさん”がたばこを吸いながら休憩したり仕事をしたりするといった印象が強かった。「かつては、喫茶室ルノアールといえば『たばこが吸える』『煙い』というイメージがずっと付いていました」と話すのは、銀座ルノアール 第一営業部の小林総一郎部長。
13年からは徹底した完全分煙を進め、16年からは一部店舗の内装を「大正ロマン」から昭和初期をイメージした「昭和モダン」へ刷新。その結果、店の印象も変わり、新たな客層の獲得につながったという。
完全分煙化に向けた改装では、天井から床までを全て仕切り、店舗の構造や空気の流れを考慮して、お客が喫煙席から離れた際も煙が禁煙席に流れないように工夫。
未成年の店舗スタッフやたばこを吸わないお客も快適に過ごせる環境を構築した結果、かつては1割に満たなかった女性客が3割程に増加。確かに休日に同店を訪れると、近年のレトロブームも相まってか若い女性客も多い印象を受ける。
この流れを踏まえ、20年4月の東京都の受動喫煙条例と改正健康増進法の全面施行を機に紙巻の喫煙禁止を決定。小林氏は、「正直悩んだ部分もある」としながらも、「たばこを吸う方は加熱式でくつろいでくださいとの判断をした」と振り返る。
普通であれば、「女性客も増えて、多くのお客が良い環境でくつろげるならよかったじゃないか」となるかもしれない。ただ、同社の判断は違った。
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