リニューアルした内装は、確かにお客の反応も好評だった。ただ、紙巻NGとした喫煙環境については、「本当に紙巻が吸えなくなっちゃうの?」といった意見が寄せられ、離れてしまうお客も一定数いたのだとか。ネットニュースでは、シェークスピアの「ジュリアス・シーザー」に登場するセリフをもじり、「ルノアール、お前もか」といった見出しが躍った。
一連の動きと時を同じくして飲食店を襲ったのが、新型コロナウイルスの感染拡大。紙巻の全面禁煙が来客数の増減にどう影響を与えたのか正確に測ることは出来なかったものの、ヘビーユーザーからの「やっぱり紙巻は吸えないんだよね」といった声は止まなかったという。
厚生労働省の統計によると、現在習慣的に喫煙している人の割合は16.7%。喫煙者は年々減少しているものの、30〜60代男性の約3割が習慣的に喫煙しているという。まさに、喫茶室ルノアールがターゲットとする客層と合致する。
また、3密回避を目的に公共の場にある喫煙所の閉鎖も相次いだ。その影響か、開いている喫煙所には多くの人がおしかけて“密”になっていたり、路上のポイ捨てが大量に発生したりする状況が目立つようになった。
飲食店の禁煙化は、お客が店を選ぶ行動にも変化をもたらしているようだ。ネットエイジア(東京都中央区)が21年2月に実施した調査では、喫煙者500人のうち、47.2%が「禁煙になったため行かなくなった店がある」と回答。また「喫煙可を理由に初めて選んだお店があるか」との問いに、39.6%が「ある」と答えた。
「紙巻禁止を決めて半年を過ぎたころから、お客さまから再び『やっぱり紙巻はNGなんだよね?』という声が、1、2店舗ではなくさまざまな店舗であがるようになりました。紙巻を禁止にしようと決めた時には、コロナ禍になることは予想できませんでしたし、『紙巻が吸えればまた利用したいんだけどね……』という声も多く頂きました。
そこで、多少お金はかかっても、喫煙ブースを設置し完全に煙が漏れないようにすれば、たばこを吸わない方、加熱式を吸う方、紙巻を吸う方という3パターンのお客さまに満足していただけるのではと、社内での議論を開始しました」(小林氏)
21年の秋頃から喫煙ブースの導入を開始し、22年4月末までに約30店舗に設置。もちろん、当初懸念していたように飲食スペースは狭くなるものの、来店客は確実に増えているという。
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