焼き芋の復活劇を支えているのは、サツマイモを入れただけで焼き芋ができ上がる電気式オーブンの登場である。誰もが比較的簡単に扱える点が特徴だ。
電気式オーブンを開発した群商(宇都宮市)の園田豊太郎社長によれば、当時スーパーが新規オープンする際のイベントで、焼き栗が人気を博していたという。そこで、焼き栗の隣で焼き芋を売ったら、大いに喜ばれるのではないかと思いついた。
1995年にガス式焼き芋オーブンを開発。スーパーの店頭で焼き芋を販売してみると、非常に評判が良く、園田社長はインストアでの焼き芋オーブンのニーズの高さを確信したという。
園田社長はもっと簡便に焼き芋ができないかと、ガスから電気に熱源を変更しようと試みた。
98年に電気式焼き芋オーブンが完成。これに興味を持ったダイエー、ヨークマートから納入が始まり、マルエツ、ユニー、ヤオハン(現・マックスバリュ東海)が続いたとのことだ。
園田社長は、「90年代のサツマイモは紅あずま、鳴門金時くらいしか品種がなかった」と振り返る。紅あずまや鳴門金時からは、いわゆる「ホクホク系」の焼き芋が出来上がる。
一方、2009年頃から「ねっとり系」の焼き芋が注目されるようになった。蜜が滴るように甘いと、スイーツとして人気が出始め、鹿児島県種子島の安納いもがブランドとして認知された。
後述するが、焼き芋専門店のはしりである、東京・銀座の「カドー・ドゥ・チャイモン」、愛知の「やきいも丸じゅん」、東京・豪徳寺の「焼き芋専門店ふじ」は、初期には安納いもを主力にしてヒットした店だ。
安納いもが成功すると、それに続けとばかりにねっとり系をつくり出す品種改良が盛んに行われるようになった。
九州沖縄農業研究センター(熊本県合志市)によって開発され、10年に品種登録された紅はるかは、安納いもに比べて栽培しやすく、短期間でねっとり系の代表格となった。また、前橋市のカネコ種苗が開発し、12年より種苗の販売が始まった「シルクスイート」もねっとり系として人気が高い。
かつて、サツマイモの品種に注目する人は多くなかったが、今は米の品種のようにさまざまなブランドが覇を競うようになった。鹿児島産か茨城産かなど、産地も重要になっている。現状の焼き芋御三家は、紅はるか、シルクスイート、安納いもになるだろう。
サツマイモの品種は日々改良されていて、将来的に最強の焼き芋用ブランドが開発される可能性がある。
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