一度は廃れた「焼き芋」がなぜブーム? ドンキは通年販売、コンビニ3社は“冷やし”を提案長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/6 ページ)

» 2022年05月14日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

マルエツでは夏でも売れる

 さて、中高年の女性に焼き芋人気の火を点けたのは、マルエツではないだろうか。

 首都圏に304店を展開するマルエツは、初期の頃から電気式焼き芋オーブンを導入して、出入口付近に設置。芋が焼ける香ばしい匂いで、集客を高めてきた印象がある。店舗の大小を問わず、ほぼ全店で焼き芋を販売している。

夏でも焼き芋が売れるマルエツ

 同社が青果売場で焼き芋販売を開始したのは05年。同社の広報によれば「弊社ご利用のお客さまのメインは50〜70代の女性で、焼き芋の購入層と一致していた」と販売動機について明かした。近年では昼食需要として、若年層の購入も増えている。

 大手焼き芋機械メーカーの電気式「遠赤外線セラミックオーブン」を使用。200度で約60分じっくりと焼く。独立した2段の窯を備え、異なった品種が焼ける機種も扱っている。

 品種は、紅はるかやシルクスイート、「紅優甘」(紅はるかを茨城県JAなめがた甘藷部会にて生産したものを独自で商標登録)などのねっとり系・しっとり系がメイン。季節により、紅あずまなどのホクホク系、金時芋や紫芋といった品ぞろえも一部にある。品種にこだわる顧客が増えている。

マルエツの焼き芋(提供:マルエツ)

 販売価格は178〜248円で、品種により異なる。一部店舗ではお試し用のハーフサイズも売っている。

 マルエツでは、焼き芋を導入した当初より、好調に販売が推移。より食味の良い品質、焼き上げ時間、焼き方を研究した。味を追求するだけでなく、焼き上がり予定時間の表示、焼き立てをお知らせする店内放送をタイムリーに行って、顧客の購買意欲を促進している。

 「売場面積の狭い都心の小型店でも、スペースを確保して焼き芋を販売している。それで、より多くのお客さまに弊社の焼き芋を知ってもらえるようになった」(マルエツ・広報)

 夏場に売れるようになったのは、直近10年ほどの間に、貯蔵技術が高まり、年間を通して原料の供給ができるようになったから。冷やし焼き芋は17年頃から、一部の店舗で品ぞろえを始めた。

マルエツの焼き芋(提供:マルエツ)

 今後は、スイーツとしての商品化や食べ方の提案ができればと、意欲を見せている。

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