こうした経緯で、焼き芋の年間商品化が進んできて、今年の春夏シーズンは、3大コンビニがこぞって冷やし焼き芋を強化してきた。セブン-イレブンが「セブンプレミアム」から焼き芋半分を冷やした「冷たく食べる焼き芋」を発売。ファミリーマートが千葉県のJAかとりと組んだスイーツ感覚の「みつあま焼き芋」を、ローソンが自社農園を共同で経営する芝山農園(千葉県香取市)の開発商品「寝た芋」をそれぞれ販売している。
コンビニでは4年ほど前から徐々に冷やし焼き芋に取り組んできた。最近は輸入小麦の価格高騰で、菓子パンやサンドイッチの値段も高いので、栄養価を考慮すれば焼き芋が選ばれる面もある。
順風満帆に見える焼き芋業界だが、懸念材料は「サツマイモ基腐病」のまん延だ。ヒルガオ科の植物がかかる病気で、18年に沖縄県と鹿児島県で報告され、関東にも広がってきている。連作障害(同じ場所でずっと栽培することで生育が悪くなること)の1つといわれる。
鹿児島県ではサツマイモ作付面積の半分で被害が出ており、全滅した圃場(ほじょう)もある。安納いもの不作の主な要因はサツマイモ基腐病。この厄介な病気の克服が、焼き芋の発展にとって必須の条件だ。
日本の伝統食である焼き芋は食事にもスイーツにもなる、未来の可能性を秘めた食品なのである。
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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